天皇「生前退位」 国民的論議を深めてこそ

 天皇陛下の生前退位を巡る有識者会議の論議が始まった。陛下は周囲に「平成30(2018)年までは頑張る」と話されたという。82歳とご高齢でもある。時間的制約はあるが、象徴天皇の在り方に直結するだけに、まず結論ありきではない丁寧な論議を望みたい。

 初会合では、11月に専門家十数人から意見を聴くことを決めた。論点は「天皇の公務の在り方」「生前退位の可否」「法整備をする場合に恒久的制度とすべきか」など8項目としている。

 共同通信社の世論調査によると、天皇の生前退位を86・6%が容認している。高齢化時代における天皇制の在り方として生前退位そのものには国民の大多数が理解を示しているといえるだろう。

 政府は退位を陛下一代に限る特別法で対応する構えで、18年を想定して法整備を検討するという。皇室典範の改正では時間を要するという事情はあろう。

 しかし、同じ世論調査では一代限りの対応を支持したのは17・8%にとどまり、76・6%が恒久的な制度を求めている。これも国民の声である。

 天皇の生前退位を巡る議論には多様な論点があってしかるべきだ。今回は踏み込まない方向になった「女性・女系天皇」の是非や「女性宮家」創設も含め、どんな論点があり、その長所と短所はどう考えられるのか。国民に分かりやすく提示してもらいたい。

 憲法は第1条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」と定めている。生前退位の論議も当然、有識者会議や政府・国会だけに任せるのではなく、国民全体で深めていく必要がある。特定の政治的な思惑や駆け引きを排除すべきであることは言うまでもない。

 有識者会議は非公開で、議事概要は1週間後をめどに公表するという。象徴天皇制の在り方を私たち一人一人が考え、幅広い議論を踏まえた「国民の総意」を形成するためにも、有識者会議と政府には積極的な情報公開を求めたい。


=2016/10/19付 西日本新聞朝刊=

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