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電通書類送検 過労死根絶の誓い新たに

 広告大手電通の女性新入社員が過労自殺した問題を巡り、厚生労働省東京労働局が法人の電通と当時上司だった男性幹部1人を労働基準法違反容疑で書類送検した。

 同社の石井直社長は、企業トップとしての責任を取って今月中に辞任する意向を表明した。

 労働局の調べによると、同社は2015年10~12月、女性新入社員ら2人に労使協定で定めた上限を超える残業をさせた疑いが持たれている。

 昨年11月7日、労働局は電通本社などを家宅捜索した。同社では女性新入社員以外に30人以上の社員が違法な残業を強いられた上、100時間以上も過少申告していたことが分かっている。

 労働局は石井社長を含む役員から事情聴取しており、上層部の組織的な関与についての捜査を本格化させる。東京地検も幹部への事情聴取に乗り出す方針という。徹底的に調べてもらいたい。

 電通社員の過労自殺は今回だけではない。1991年8月にも入社2年目の男性社員が命を落とし、同社は遺族と法廷で争った。

 最高裁は2000年、一審と二審に続いて電通の責任を認めた上で二審の「社員側にも落ち度がある」とした判決を破棄し、審理を東京高裁に差し戻した。過労自殺について、最高裁が会社の責任を認めた初の判断でもあった。

 差し戻し審では、電通が約1億6800万円を支払うことで和解し、同社は「二度と起こらないよう努力する」と宣言した。

 それにもかかわらず、なぜ悲劇は繰り返されたのか。社員の心構えを説く「鬼十則」にある「取り組んだら放すな、殺されても放すな」に代表されるよ
うに、長時間労働を当然のように考える企業体質があったことは否めない。

 遮二無二に働くことを美徳とした時代は大きく変わったことを自覚すべきだ。英語でも日本語の読みで通じる「過労死」は、日本の労働慣行が生み出した負の遺産である。電通だけの問題ではない。社会全体で長時間労働を解消し、過労死を一掃していきたい。


=2017/01/11付 西日本新聞朝刊=

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