ホークスファンタブレット

新学習指導要領 「深い学び」実現するには

 子どもたちを待ち受ける未来に目を向けてみよう。

 グローバル化と情報化の進展で、社会は目まぐるしく変化し、複雑さを増していく。少子高齢化で生産年齢人口は減り、社会保障や医療のコストは増大する。そうした時代や社会の変化を見据えて、どんな学校教育を目指すのか。

 文部科学省がきのう、2020年度から導入を始める小中学校の学習指導要領改定案を公表した。

 習得すべき「知識・技能」に加え、それを土台に養成すべき「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」まで明示して、教育現場に育成を求めた。

 日本の教育に深く根を張った知識偏重教育からの脱皮を、強く促す内容といえるだろう。

 小学校では3年から外国語活動を始める。5、6年は正式教科に格上げし、授業時間を増やす。

 情報技術(IT)の進歩をにらみ、コンピューターなどを使って論理的思考を育むプログラミング教育も取り入れる。

 期待と理想が随所に詰まった「学びの地図」だが、実現するには高いハードルが待ち構えている。教育現場への周知徹底とともに、教育の環境や条件を拡充していく努力が求められるだろう。

 ●「教え方改革」に向けて

 教員が子どもに一方的に知識を与える授業では、確かな思考力や能動性は養成できない。

 そこで、「主体的・対話的で深い学び」という方向性を打ち出し、授業改善を求めた。いわば「教え方改革」である。

 子どもが学ぶ喜びを感じながら自ら考え、表現する。対話を通し考えを組み立て、協働する力も養う。そんな新しい授業だろう。

 中央教育審議会の答申に盛り込まれ、次期要領の象徴だった「アクティブ・ラーニング」の文字が消え、この表現に統一された。

 米国流のグループ学習や討論などにとらわれない、柔軟で自由な発想を促す意図が文科省にあるとすれば、歓迎すべきことだ。

 双方向の授業や、少人数のグループによる討論には、高度な指導技術が求められる。教員が自ら学び、同僚と授業研究を積み重ねる必要がある。

 大切なのは、子どもに学ぶ意義と喜びを実感させることだ。自ら深く考える力は、その延長線上に育つ。

 思考力や対話力といった抽象的な能力の習得は、知識の暗記などに比べ難度が高い。子どもの学力差が如実に出るという意見もある。学習についていけない子どもへの目配りが欠かせない。

 新しい授業の創出には「教員の多忙」という問題を解決する必要がある。連合のシンクタンク「連合総研」の調査では、週に60時間以上働く教員の割合は、公立小学校で7割超、公立中学校で8割超に上った。深刻な実態だ。国は教員の「働き方改革」にも取り組むべきだ。

 また、日本の教育に対する公的支出は国際水準よりかなり低い。家庭の経済力によって学力が左右される現状は、貧困の世代間連鎖の一因ともされる。政策の優先順位を考えるに当たって教育にもっと公費を投じるべきではないか。そんな議論の契機ともしたい。

 ●マニュアル化の懸念も

 1947年、文部省(当時)が初めて示した学習指導要領「試案」の序論にこう書かれている。

 〈上の方からきめて与えられたことを(中略)実行する〉のではなく、〈下の方からみんなの力で、いろいろと、作りあげて行く〉。国家が管理した戦前教育の反省を踏まえた再出発の決意である。

 法的拘束力を伴う正規の要領になった後も、国は「大まかな内容」を示す大綱にとどめ、学校の自主・自律と裁量を重視してきた。

 次期要領案の記述は、資質や能力にも細かく踏み込んだ結果、現行の約5割増しに膨らんだ。

 要領をマニュアル化した授業が増えないか。懸念が募る。

 「深い学び」の授業改革について、文科省は現場の工夫を求める一方で、事例を広く紹介していくという。教員を混乱させない配慮は必要だが、事例をなぞった授業が広がっては意味がない。

 子どもを「深い学び」に導く授業がしっかり定着するにはどうすべきか。

 未来を担う子どもたちのために国民的な教育論議を深めたい。


=2017/02/15付 西日本新聞朝刊=

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