朴大統領罷免 韓国は混乱に終止符打て

 韓国憲法裁判所が、国会で弾劾訴追された朴槿恵(パククネ)大統領を罷免する決定を言い渡し、朴氏は即時失職した。60日以内に新たな大統領を決める選挙が行われる。

 4年前「韓国初の女性大統領」の期待を背負って登場した朴氏は、今度は韓国憲政史上初めて「罷免された大統領」として退場することになった。その落差はあまりに大きく、期待を裏切られた国民の怒りもまた強い。

 韓国社会は、今回の衝撃的な政変を教訓に、韓国政界に巣くう悪弊と決別し、停滞する国政を立て直す契機としてほしい。

 ●縁故主義と決別を

 憲法裁は、国会が訴追していた複数の弾劾理由のうち、朴氏の親友である崔順実(チェスンシル)被告に関係した国政介入や利益供与について「憲法違反」と認定した。決定理由の中で、朴氏が大統領権限を乱用し、崔被告による私的な利益追求に手を貸したと指摘した。

 さらに国政介入の事実隠蔽(いんぺい)を図った朴氏を「順法精神がない」と厳しく指弾した。

 韓国では、多くの大統領が任期終盤に親族などの疑惑が表面化し、影響力を失う事態に見舞われている。権力者の周辺が立場を利用して利得にあずかる「縁故主義」が背景にあるとみられている。

 崔被告との関係が浮上するまで、朴氏の政治体質は比較的清廉だと思われてきた。それが一転、今回の罷免劇で、韓国政界における縁故主義の根深さを印象づけた。

 朴氏が失職したことで、贈収賄疑惑などを巡る検察の捜査も本格化する。これを機に徹底的にウミを出し、社会の長年の因習から脱却を図るべきである。

 ●北朝鮮の脅威増す

 朴氏を巡る疑惑が浮上した昨秋以降、韓国政治の停滞は著しい。朴氏が11月末に条件付きで辞意を表明したものの、その後も居座りを続けたため、韓国は誰が政策決定のトップなのか判然とせず、混乱の収拾時期も見通せない異常事態に陥っていた。

 この間、国際情勢は激動している。米国ではトランプ政権が発足し、アジア外交の見直しを始めた。そして何より、韓国にとって最も危険な隣国である北朝鮮の動きは、不穏さを増すばかりだ。北朝鮮は今年に入り2回弾道ミサイルを発射し、金正男(キムジョンナム)氏殺害事件への関与も疑われている。

 韓国政府の対応は受け身で、事態打開への主体性が見られない。高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備を巡って中国との関係も悪化する一方である。

 罷免決定を受けて朴氏支持者のデモは激しさを増し、警察との衝突で死者も出た。反朴氏派との対立激化による混乱も心配だ。

 韓国社会は憲法裁の決定を受け入れ、ルールに沿った新たな大統領の選出に精力を注ぐべきだ。北朝鮮の脅威が増大する今、韓国にはこれ以上政治の混乱を長期化させる余裕などないはずである。

 ●日韓合意維持せよ

 朴氏は任期の前半、歴史認識を巡って日本に厳しい態度を取り続けたが、2015年末には従軍慰安婦問題について、日本政府との間で「最終的かつ不可逆的な解決」で合意した。日韓関係改善にとって大きな前進とみられた。

 しかしその後、朴氏が影響力を失うにつれ、日韓合意を否定する動きが勢いを増している。ソウルの日本大使館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の撤去の見通しが立たないばかりか、釜山の日本領事館前にも同じ像が置かれる事態となった。

 罷免を受けて実施される大統領選では、革新系の野党候補が世論調査で大きくリードしており、保守系の与党は劣勢だ。野党側は朴氏の業績の全否定を訴える構えで、野党の有力候補はすでに日韓合意の破棄にも言及している。

 日本側としては、大統領選で日韓合意の是非があらためて争点になり、野党勢力が韓国国民の反日感情をあおる事態は避けたい。

 韓国の政争の中で、日韓関係をうまく制御し、日韓合意を維持することが重要課題だ。この時期に司令塔となる駐韓大使を一時帰国させたままで大丈夫か。帰任を検討してもいいのではないか。

 日本政府は、2カ月以内に誕生する新たな大統領との間で、東アジアの情勢を見据えた日韓関係を早期に再構築する必要がある。


=2017/03/12付 西日本新聞朝刊=

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