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衆院解散 安倍1強政治を問い直す

 ■2017衆院選■

 衆院がきのう解散された。衆院選は来月10日公示、22日投開票と決まった。2014年12月以来の総選挙になる。

 唐突な解散である。北朝鮮情勢が緊迫する中で、なぜ今解散なのか。召集したばかりの臨時国会で一切議論をせず、問答無用とばかりに冒頭解散するのはどうしてなのか-素朴な疑問は尽きない。

 だが解散による衆院選の意義は大きい。安倍晋三首相の仕掛けた不意打ち解散は野党再編を促し、政治がダイナミックに動き始めた。「1強」と呼ばれる安倍政治の功罪を問い直す機会としたい。

 ●「政権選択」の様相に

 こんな急展開を誰が予測し得ただろうか。想定外の解散政局が永田町に激震をもたらしている。

 小池百合子東京都知事が自ら代表に就任して新党「希望の党」を結党すると、今度は民進党の前原誠司代表が打ち出した新党への「合流」が党内で了承された。

 小池新党の準備が遅れ、民進党を離党する議員が後を絶たないうちに-そんな首相側の思惑を突き崩そうとするかのように、野党は再編に向けて一気に動く。

 「急ごしらえ」「寄せ集め」そして「選挙目当て」-小池新党に対する批判や懸念は当然だ。野党再編の行方もまだ見通せない。

 しかし、そんな混沌(こんとん)とした状況でも「もう一つの選択肢」を求める国民の期待感は膨らみ、与党には「脅威」と映り始めている。

 「1強」政治の下で色あせていた二大政党による政権選択選挙の様相がにわかに浮上してきた-といえるだろう。

 内閣支持率を一時急落させた獣医学部新設の加計(かけ)学園問題、国有地格安売却の森友学園問題、防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題は解明されないままの衆院解散である。

 憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を3カ月以上も放置した揚げ句の冒頭解散に対し、野党は「首相と政権の都合を最優先した大義なき解散」と批判する。

 憲法はもとより、国会や論議を軽んじる「1強」政治のひずみが極まったといえるのではないか。その結果が誘発した野党再編の急展開といえるかもしれない。

 「経済最優先」の看板を掲げながら首相は、国民の知る権利を侵す恐れがある特定秘密保護法、集団的自衛権行使容認の安全保障関連法、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を成立させてきた。

 野党の反対や国民の懸念を振り切って、与党は強行的な採決を繰り返した。首相や閣僚の国会答弁は曖昧で、質問に正面から向き合おうとしない姿勢も目立った。

 批判を浴びるたびに首相は「丁寧な説明」を約束したが、きちんと守られた形跡はない。加計学園問題などでも同じことがいえる。

 強気の政権運営は、一方で「決められる政治」につながった。その象徴が経済政策「アベノミクス」だ。大胆な金融政策、機動的な財政出動、成長戦略の「三本の矢」でデフレ脱却を目指した。

 首相が強調するように、国内総生産(GDP)は6四半期連続でプラス成長し、雇用も改善するなど確かな実績も上げている。

 ●日本の針路決める審判

 少子高齢化と北朝鮮の脅威を「国難」と位置付け、政権基盤を強化して国家的な危機を今こそ「突破」する。「解散の理由」を首相はそう説明した。それが「大義」かどうかも含めて審判は私たち有権者へ委ねられることになる。

 第1次政権を含めた首相の在職は5年10カ月を超え、戦後歴代3位になった。今度の衆院選に勝利し、来年9月の党総裁選で連続3選を果たせば、戦後トップに躍り出る可能性が出る。

 その安倍政治を支える力の源泉が選挙にほかならない。自民、公明の与党は衆参の国政選で4連勝中だ。その結果、自民党は解散前、衆参で単独過半数を占め、首相の下での憲法改正に前向きな「改憲勢力」は両院とも発議に必要な3分の2を超えた。

 首相が悲願とする憲法改正も含めて長期政権に政治の安定を託すか。それとも「1強」政治にはNOを突き付けるか。まさに日本の針路を決定付ける選択である。

 この選択の重みを踏まえ、与野党は国民へ判断材料を提供する政策論争を繰り広げてほしい。


=2017/09/29付 西日本新聞朝刊=

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