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北朝鮮問題 「国難」に踊らされぬよう

 ■2017衆院選■

 今回の総選挙は、北朝鮮の核・ミサイル開発で朝鮮半島情勢が緊迫する中で実施される。衆院解散に踏み切った安倍晋三首相は、北朝鮮問題などを挙げ「国難突破解散」とネーミングしている。

 確かに北朝鮮の核・ミサイル開発は日本にとって重大な脅威であり、この問題にどう対処するかは選挙の重要な論点である。

 しかし、安倍政権が争点として北朝鮮の脅威を強調すればするほど、「森友・加計(かけ)問題」から有権者の目をそらす意図があるのでないか、と疑わずにおれない。

 危機を叫ぶ声に惑わされず、北朝鮮対応という争点を、この総選挙の中で適切に位置付けたい。

 ●「危機の政治利用」か

 「民主主義の原点である選挙が、北朝鮮の脅しによって左右されることがあってはならない」

 衆院解散の意向を表明した25日の記者会見で、安倍首相はこう述べ、解散時期の判断に絡めて北朝鮮への強い対決姿勢を示した。

 よく吟味すれば、意味が分からない発言だ。北朝鮮はなにも「今選挙をするな」などと日本を脅しているわけではない。解散・総選挙の時期を選んだのは他ならぬ首相自身である。首相は何に対して力んでいるのだろうか。

 「国難」を辞書で引くと「一国の危難」(広辞苑)とある。危難は「一命に関わるような難儀。災難」だ。国の命運に関わるような災難、という意味だろう。例えば先の大戦での敗戦とか近年だと東日本大震災などが連想される。

 首相が現在の半島情勢を本当に「国難」と感じているのなら、むしろ解散で政治空白をつくるのは筋が通らない。大災害の最中に解散する首相はいないだろう。

 一般的に「危機」は現政権に有利に作用するとされる。「四の五の言わずに現体制の下に結集しよう」という意識が働くからだ。もし、首相がそうした異論封じの効果を狙って「国難」という言葉遣いをしているとすれば、「危機の政治利用」と言わざるを得ない。

 ●圧力の「その先」示せ

 ただ、安倍首相の思惑はどうあれ、現下の朝鮮半島情勢にどう対応するかは、総選挙で大いに論じられるべき問題だ。

 北朝鮮に核・ミサイル開発をやめさせるため、日米が結束を確認し、国際社会の連携によって圧力を強めていく。これが現在の安倍政権の方針だ。「国際連携で北朝鮮に圧力」という基本線は、野党にも大きな異論はないだろう。

 問題は、圧力をかけ続けることで事態をどう収拾できるのか-だ。そこは安倍政権も必ずしも明確ではない。各党ともに圧力の「その先」を提示してほしい。

 北朝鮮問題のもう一つの側面は米国の対応である。米朝の威嚇の応酬が過熱し、米国が軍事攻撃に踏み切るのではないかという懸念が消えない。その場合、日本に紛争が飛び火する可能性は高い。

 安倍首相は「(軍事も含む)全ての選択肢がテーブルの上にある」とするトランプ米政権の姿勢を支持する。しかし国民は「米国主導の有事勃発」に不安を抱く。「米国の北朝鮮への軍事的圧力にどう向き合うか」という課題についても、与野党で意見を戦わせ有権者に考え方を示すべきである。

 ●「対決」より「解決」を

 公示日の10月10日は朝鮮労働党の創建記念日にあたる。この日の前後だけでなく、投票日までの3週間余りのうちに、北朝鮮がミサイル発射など新たな挑発を行う可能性は十分にある。そうなれば、Jアラートが鳴り響き、テレビの画面は瞬間的にミサイルのニュース一色に染められるだろう。

 有権者の動揺を受け、選挙戦では自民党だけでなく各党とも北朝鮮との対決姿勢をアピールし、圧力強化を叫ぶことになりそうだ。北朝鮮に対する国民の危機意識に乗っかる形で、各党が強硬路線を競い合う展開も予想される。

 だが、それは決して建設的ではない。各党が競うべきなのは「対決」ではなく「解決」である。

 有権者としても、まずは落ち着きたい。「国難」などの強い言葉に踊らされるのではなく、社会に広がる有事ムードからも一歩引いて、現在の朝鮮半島危機を収拾する具体策を提示してくれる政党がどこか、冷静に見極めたい。


=2017/09/30付 西日本新聞朝刊=

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