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憲法改正 丁寧な議論を重ねてこそ

 ■2017衆院選■

 憲法改正は、その是非を含めて大いに議論すべきテーマである。ただし、あくまでも丁寧で慎重な論議を求めたい。

 これは私たちの変わらぬ主張である。憲法論議は「この国のかたち」を考えることでもある。同時にそれは公権力の在り方、国民の権利や義務にも関連する。性急な議論にはなじまない。

 目指す政策の中に改憲を挙げる小池百合子東京都知事の新党「希望の党」に民進党が合流することになり、政界の改憲ムードは高まるかもしれない。しかし、国民の憲法観は永田町以上に多様で幅広いことを忘れてもらっては困る。

 ●厚み増すか改憲勢力

 衆院解散前、安倍晋三首相の下での改憲に前向きな自民党、公明党、日本維新の会など「改憲勢力」の議席は衆参両院で改憲発議に必要な3分の2を上回っていた。衆院選後はどうなるのか。

 小池新党に民進党が合流することで、改憲そのものに前向きな勢力は厚みを増すかもしれない。非改憲勢力は護憲を明確にする共産党や社民党などにとどまる。

 とはいえ改憲に前向きな勢力も内実は必ずしも一枚岩ではない。

 小池氏は「希望の政策」の一つとして改憲を掲げ、民進党出身者を新党の公認候補者とするかどうかについて、安全保障政策とともに改憲への姿勢によって個別に判断する意向を示している。

 しかし、小池氏自身の憲法観はいまひとつ明確ではない。語ったのは「改憲の議論は避けない」「9条に絞った議論に費やされていいのか」「地方自治に関する部分は極めて手薄」など限定的だ。

 首相の解散権の制約▽「知る権利」を含む表現の自由の強化▽国と地方の在り方-の3点を衆院選公約に掲げる予定だった民進党の方が具体的といえるだろう。

 小池氏が連携を目指す日本維新の会は教育無償化、国と地方の統治機構改革などを掲げる。

 さまざまな意見が交錯する中で、小池氏はフリーハンドを得るためにあえて明言を避けているようにも見える。

 改憲は、現時点で小池氏の政策順位として上位にあるとは思えない。小池氏の関心はむしろ行政改革や情報公開に向いている。そうした中で、新党の改憲論議はまさにこれから始まる段階である。

 ●反論押し切り公約に

 改憲が党是の自民党にしても論議は十分とは言い難い。

 自民党は、衆院選の公約で「憲法改正案を国会に提出し、着実な一歩を進める」と打ち出す方向だ。具体的には教育無償化、緊急事態条項、参院の合区解消、そして改憲を悲願とする首相が今年5月に突然表明した「9条に自衛隊を明記」を検討している。

 1項の戦争放棄と2項の戦力不保持と交戦権否定は残し、自衛隊の存在を明記する-という案だが、党内には異論も根強い。

 自民党は野党時代の2012年に保守色の強い憲法改正草案をまとめ、9条では国防軍保持を掲げた。石破茂元幹事長は「党議決定は今でも草案だ」と譲らない。教育無償化も含めて、反論を押し切っての公約になる。

 改憲日程も自民党は首相の「20年の東京五輪に合わせて改正憲法施行」との目標に合わせようとしている。あまりにも性急だ。

 そもそも憲法に基づく野党の臨時国会召集要求を2回も無視した首相に改憲を進める資格があるのか、素朴な疑問は拭えない。

 衆参両院の憲法審査会も論議が深まってきたとはいえない。先の通常国会で、衆院では「天皇」「国と地方の在り方」など課題ごとに有識者の意見を聴き、各党が意見表明した段階にとどまる。参院は一度も論議しなかった。

 では国民はどうか-。衆院選に関する共同通信社の第1回トレンド調査では、投票で最も重視するのは「年金や少子化対策など社会保障」「景気や雇用など経済政策」「安全保障や外交」が上位に並び、憲法改正は8・9%にとどまった。首相の下での改憲も反対51・0%、賛成33・9%だった。

 こうした国民の憲法観を国会は反映しているのか。衆院選では多くの党が改憲問題を取り上げる見通しだ。であるなら是非も含めて論点を明確にし、まずは国民的論議の材料提供から始めてほしい。


=2017/10/01付 西日本新聞朝刊=

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