帰省に寄せて 「古里の将来」語り合おう

 帰省された古里で迎春の準備は進んでいますか。

 都会の騒々しさから離れて、ほっとされていることでしょう。年末・年始の短い期間かもしれませんが、九州の豊かさと温かさを存分に味わってください。

 地方の疲弊が指摘されて久しくなりました。もう、お気づきでしょう。子どものころ、お使いに行った商店街はシャッター通りになっています。お正月の買い出しも国道沿いの大型店でしょうか。

 ●見えない成果の兆し

 母校の小中学校が統合された人もいるでしょう。高校通学に利用したバスは廃止され、ローカル鉄道も減便でにぎわっていた駅前の人通りは少なくなりました。実り豊かだった田畑が雑草だらけの耕作放棄地になっているのに驚かれたかもしれません。

 民間研究機関「日本創成会議」が、全国896市区町村が「消滅可能性都市」との試算を発表したのは2014年でした。詳報した「地方消滅」(中央公論新社)はベストセラーになりました。

 九州は政令指定都市の行政区も含めて249市区町村のうち半数の125市区町村が消滅の恐れとの指摘でした。

 よく読めば、古里が消えるのではなく、地方自治体が立ち行かなくなるとの警告ですが、いずれにしても苦境にあるのは事実です。皆さんの古里の自治体も消滅可能性の宣告を受けたでしょうか。

 この指摘を受ける形で、安倍晋三首相は15年春の統一地方選で「地方創生」を公約しました。当面は5カ年計画で、これまでの3年間に5600億円もの交付金が全国の自治体に配分されました。

 地方の活性化に時間がかかるのは理解しますが、それにしても成果の兆しが一向に見えないのはどうしたことでしょうか。

 自治体は目標数値を記した地方版総合戦略を作り、それを基にした地域再生計画が政府に認められれば交付金を受ける‐地方創生の大まかな仕組みです。

 まずは政府のお眼鏡にかなうことを優先し、地域特性に欠ける計画ばかりなら、芳しい成果が出にくいのも当然でしょう。

 焦った政府は、東京23区内の大学定員抑制策を打ち出しました。若者の東京流入を抑え、人口の一極集中に歯止めをかけようというのです。しかし、学生の進学先は政府が強制したり、誘導したりすることではありません。

 ほかにも気になることがあります。税制改正で地方消費税の都道府県配分方法が見直されることになりました。従来は消費額75%、人口17・5%、従業員数7・5%で計算しましたが、消費額と人口を各50%にしました。

 消費額の割合を小さくすれば大都市への配分が少なくなります。都市部に多い法人2税の一部を国税化して吸い上げ、自治体に再配分しているのも同様の狙いです。

 豪華返礼品が話題になったふるさと納税も実質的には住民税の移転にほかなりません。総務省によると、17年度に住民が別の自治体にふるさと納税で寄付したため住民税控除で減収になったのは東京都(市区町村を含む)466億円、神奈川県188億円、大阪府151億円と大都市が続きます。

 ●相互に補完する関係を

 地方の特性を生かして魅力を増す施策ではなく、大都市の税金や若者を無理やり地方に移そうというのです。大都市と地方の対立構図をつくり、地方疲弊の矛先を政府ではなく大都市に向けるのでは「地方分断策」です。どこが「地方創生」なのでしょうか。

 古里を取り巻く厳しい状況に心を痛められていると思います。でも皆さんが帰郷するたびに、ほっとするのはなぜでしょう。懐かしさだけではないと思います。

 古里は豊かで温かい。皆さんが帰省すれば笑顔で迎える家族や同級生、先輩・後輩がいます。少し荒れたかもしれないけど、包み込むような風景は健在です。

 大都市と地方が対立すべきでないことは両方を行き来する皆さんがよく知っています。大都市にあって古里にないもの、古里にあって大都市にないものがあります。相互に補完するいい関係ができるはずですよね。

 せっかくの機会です。再会した家族や友人と一緒に古里の将来や大都市と地方のあるべき姿を語り合ってみませんか。


=2017/12/30付 西日本新聞朝刊=

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