政治展望 国民の信頼取り戻せるか

 政治はこのまま国民との距離を広げ、民意から遠ざかっていくのか-。2018年の国政は大きな岐路に差し掛かっている。

 そんな大げさなと思われるかもしれない。民意は「決着」しているといわれれば、その通りだ。

 確かに昨年の衆院選、一昨年の参院選と自民党が勝ち続け、安倍晋三首相の「1強政治」は数の上では安定している。当面、国政選挙の予定もない。それでも、政治の在り方が根本から問われていると指摘せざるを得ない。

 ●くすぶる不信の火種

 与野党を問わない政治不信と国民の政治離れが進行している。その先に何があるか。深刻さに政治家は気付いているのだろうか。

 衆院選の自民圧勝で、首相は国政選5連勝を遂げた。国有地格安売却の森友学園問題、獣医学部新設の加計(かけ)学園問題、防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題と政権絡みの疑惑が相次ぎ表面化したにもかかわらずだ。

 しかし、不信の火種はくすぶっている。衆院選後の特別国会で、首相の妻昭恵氏が一時関わった森友学園に対する財務省の異様な厚遇ぶりが明白になった。

 なぜ森友学園だけが特別扱いか、官僚に忖度(そんたく)はあったか、首相は何らかの指示をしたか-疑惑はむしろ深まった。加計問題や日報問題も同様の経過をたどる。

 共同通信社の昨年12月の世論調査では、森友問題を巡る首相の説明について75・0%が不十分と答えた。獣医学部設置認可に関する政府の説明に「納得できない」とする回答は66・1%に達した。

 自民党圧勝の衆院選も内実はどうか。自民、公明の与党得票率は小選挙区、比例代表ともに50%を切った。全議席を単純比例で決めれば与党は過半数割れ、小選挙区で野党が統一候補を立てたら63選挙区で勝敗逆転との試算もある。

 野党分裂と選挙制度に助けられた「際どい圧勝」との見方も可能だ。疑惑解明の先送りは、もう許されない。

 ●長期政権のひずみも

 大きな選挙がない年は世論への影響を気にせず、大胆な政策展開ができるとされる。首相は何をするつもりなのか。

 第1次政権も含めると首相の在任は昨年末で6年を超えた。9月の自民党総裁選で連続3選を果たせば、来年8月には戦後トップ、同11月には戦前を含めて歴代最長になる展望が開けてくる。

 既に堂々たる長期政権だからこそ「1強」の使い方を間違えないでほしい。本来は持続可能な社会保障の構築や抜本的な財政再建など難題に取り組む好機である。

 首相は生産性革命や人づくり革命を掲げ、通常国会には働き方改革関連法案を提出する予定だ。どれも必要性は理解するが、果たして優先順位が高いかどうか。

 首相が悲願とする憲法改正を「1強」の下で無理やり推し進めることを国民は求めていない。

 長期政権のひずみもある。消費税増税の使途変更など首相の「独断専行」が目立つ。野党の質問時間短縮は通常国会でも求めるという。国会や与党内の議論を軽視する姿勢には野党だけでなく、与党からも批判する声が出始めた。

 先の衆院選で議席減の公明党に不満が生じるのは当然として、自民党内でも反発が総裁選に向けて顕在化しつつある。首相が無投票当選した15年総裁選とは異なる要素が生まれたのは間違いない。

 ●どうする「多弱」野党

 「1強」の与党に対し、野党は第1党だった民進党の分裂で「多弱」に沈む。政権交代はますます遠ざかったと言わざるを得ない。

 国民の知る権利を侵害しかねない特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を次々に成立させてきた政権の振る舞いを野党はチェックできるのだろうか。

 議会制民主主義の発展には健全な野党の存在が不可欠だ。どう態勢を立て直して、国民の信頼を回復するのか。野党も正念場だ。

 先の衆院選で投票率は戦後2番目に低い53・68%にとどまった。有権者の半数近くが選挙に背を向けた意味は重い。

 深刻化する政治不信は、与党と野党を問わず政治の共同責任である。政治そのものの存在意義が国民から厳しく問われていると言っても過言ではあるまい。


=2018/01/03付 西日本新聞朝刊=

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