「慰安婦」新方針 韓国も溝を埋める努力を

 韓国政府は9日、従軍慰安婦問題の解決を確認した2015年12月の日韓合意に関する新方針を発表した。新方針では、合意が「両国間の公式合意だったという事実は否定できない」として、日本側に再交渉は要求しないとした。

 文在寅大統領は朴槿恵前政権下で交わされた日韓合意に否定的で「再交渉」を訴えて当選した。昨年12月、外相の作業部会が「合意は被害者(元慰安婦)の意見を十分に集約しなかった」とする検証結果を出したこともあり、韓国側が合意の破棄や再交渉を主張する可能性も取り沙汰されていた。

 今回、文政権が日韓合意を「両国間の公式合意」と認め、再交渉を断念したのは常識的で妥当な判断だ。政権交代で全ての合意が覆されるようなら、国家間の信頼関係は成り立たない。文政権も世論より合理性を優先したといえる。

 しかし、新方針には懸念すべき部分がある。合意に基づき日本が拠出した10億円を凍結し、韓国政府が同額を拠出するという点だ。拠出金を韓国予算に置き換えることで、合意を実質的に無効化する意図があるのではないか。

 また、日本政府に「元慰安婦らの名誉や尊厳を回復し心の傷を癒やす努力を続けるよう期待する」とした点も疑問だ。こうした努力が不断になされるべきであることに異論はないが、日本側に新たな対応を求めるのなら、事実上の再交渉要求になってしまう。

 韓国政府は現状の否定と日本への要求に終始するのではなく、この問題での日韓の隔たりを埋めるため、自ら努力をすべきではないのか。日本に厳しい一部の世論に迎合するのではなく、大局的に日韓関係を改善するため、国民を説得する気概を持つべきである。

 最終的に解決したはずの問題が再燃したことで、日本側の徒労感は強い。とはいえ批判の応酬に陥り、元慰安婦の女性たちの尊厳まで否定しているように受け止められれば、国際的な信用を失うのは日本だ。日本側としては冷静さを失わず、合意の着実な履行を韓国政府に繰り返し求めていきたい。


=2018/01/10付 西日本新聞朝刊=

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