米中貿易摩擦 賢明な落としどころ探れ

 安全保障に名を借りた米国の輸入制限や独善的な一方的制裁、そしてビジネス感覚の取引外交に、強く自制を求めたい。

 米国と中国の間の貿易摩擦がエスカレートし、憂慮すべき事態になっている。

 発端は、トランプ米大統領が安全保障上の脅威として中国などを対象に鉄鋼・アルミニウムに高関税をかける輸入制限を発動したことだ。これに対し中国は報復措置として、米国からの豚肉など輸入品128品目に最大25%の追加関税を課した。これが、いわば第1弾だ。

 事態はこれで収まらず、今度は米国の知的財産権を中国が侵害しているとして、米国が中国製の産業用ロボットや工作機械など約1300品目に25%の追加関税を課す制裁措置を公表した。中国も直ちに米国産の大豆や自動車、航空機など106品目に同率の関税を上乗せする措置の準備に入った。これが第2弾である。ともに500億ドル(約5兆3千億円)規模の輸入品に関税を課すとしている。

 さらに、トランプ米大統領は対中制裁の規模を1500億ドルに増額するよう指示し、中国も即座に報復拡大を示唆した。

 事態は、双方とも深手を負いかねない報復合戦の様相だ。

 第2弾以降について米国は発動判断まで約2カ月の猶予を設けるようだが、最大の問題は大統領の真意が読めないことだ。

 秋の米中間選挙を見据え、支持確保の思惑があるとされる。本気で貿易戦争も辞さないのか、脅しで相手を揺さぶり譲歩を引き出す交渉術なのか、判断しかねる。また突如、離脱を表明していた環太平洋連携協定(TPP)への復帰検討を指示するなど一貫性も欠いている。

 一方、この貿易摩擦では中国も問題の発生源であることを免れない。中国は鉄鋼の過剰供給に有効策を実現できておらず、中国の知的財産権侵害や技術移転強要は日欧も批判している。

 米国が独断専行で中国を標的にしたため、米国は自由貿易に逆行する国際秩序破壊者、中国は自由貿易の推進役という奇妙な構図も生まれた。中国の不公正取引には日米欧などが共同で是正を迫るのが筋だろう。世界貿易機関(WTO)の紛争処理機能の立て直しも必要だ。

 気になるのは日本への影響だ。日本は独自技術を駆使した高付加価値品が多く、米鉄鋼輸入制限の影響は限定的との見方がある。他方、対象品目の多い中国の知的財産権侵害への輸入制限は発動されれば世界的な供給網への影響が大きく、日本も悪影響を免れないとみられる。

 世界経済安定のためにも、米中は貿易戦争を回避し、賢明な落としどころを探るべきだ。

=2018/04/14付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]