シリア攻撃 米ロは危機回避へ自制を

 米国、英国、フランスの3カ国は、シリアのアサド政権が化学兵器を使い市民を殺傷したと断定して、シリアへの軍事攻撃を行った。米国のトランプ政権がこの軍事行動を主導した。

 米英仏軍は、巡航ミサイルや戦闘機でアサド政権の化学兵器関連施設を空爆したとみられる。トランプ大統領は国内向け演説で「怪物による犯罪だ」とアサド政権を非難し、攻撃は「化学兵器の生産や拡散、使用に対する抑止」と主張した。

 この攻撃について、安倍晋三首相は直ちに「化学兵器の使用を許さないとする米英仏の決意を支持する」と表明した。

 戦闘員だけでなく民間人を無差別、残虐に殺傷する化学兵器の使用は断じて許されない。使用した当事者を罰し、これ以上の使用を阻止することが、米英仏の軍事行動の狙いである。

 しかし、それはあくまで「シリア政権が化学兵器を使用した」という主張が事実であることが前提だ。アサド政権やその後ろ盾であるロシアは、政権による使用を完全否定している。

 米国は「アサド政権の仕業」と断定した証拠を国際社会に向けて開示する責任を負う。同時に、攻撃の国際法上の根拠も示さなければならない。

 最大の懸念は、この攻撃がシリア情勢の好転につながらず、さらなる状況悪化と混迷を招くのではないか-という点だ。

 シリアでは米国が反体制派を後押しするのに対して、ロシアとイランがアサド政権を支援し、軍や民兵をシリア国内に送り込んでいるとされる。

 今回の米英仏による攻撃で、ロシアやイラン側に被害が出たかは不明だ。米国は攻撃対象を限定し「攻撃は1度だけ」とするなど、戦闘拡大を回避する姿勢を見せている。しかし、米ロ関係はすでに冷戦後最悪の状態で、シリアで偶発的な衝突が起きる可能性も否定できない。

 トランプ政権は昨年4月にも化学兵器使用疑惑を受けてシリアを攻撃したが、最近では唐突にシリアからの米軍早期撤収を言い出しており、対応が場当たり的だ。シリア内戦収拾に向けた長期戦略は見られない。

 一方で、ロシアの責任も重い。ロシアは国連安全保障理事会で化学兵器疑惑の解明に向けた調査機関設立に拒否権を行使するなど、収拾に努力する国連を機能不全に陥らせている。

 国連のグテレス事務総長は今回の攻撃後に声明を出し、関係国に自制を求めた。米国やロシア、周辺国が軍事行動の連鎖に発展しないよう自制し、シリア内戦収拾に向け包括的で建設的な協議を始めるべきだ。そうしなければ、中東のみならず世界全体が不安定化しかねない。

=2018/04/15付 西日本新聞朝刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]