「かまとと」は、知っているのに知らないふりをすること…

 「かまとと」は、知っているのに知らないふりをすること。女性が世間知らずを装って「かまぼこは、とと(魚)からできているの?」と聞いたのが由来とか

▼近頃はスーパーで切り身の魚を買うことが多くなった。魚の姿形を知らないばかりか、海の中で切り身が泳いでいると思っている子もいるそうだ

▼いろんな魚を見て知ってもらおう、という狙いは悪くない。ただ、死んだ魚の上を滑るのはどうか。北九州市のテーマパークが始めた企画「氷の水族館」。死んだ魚約5千匹をスケートリンクの氷の中に埋めた

▼「気持ちが悪い」「残酷だ」との批判が相次ぎ、企画は中止に。一方で「面白い」という声もあった。好悪は人それぞれだが、不快に感じる人がいると予想しなかったのは、客商売としては世間知らず。「命を軽視している」とまで言われれば、知らないふりもできまい。それが廃棄処分される死んだ魚であっても

▼では、とも思う。生きた魚を狭い水槽に閉じ込めている本物の水族館は。家庭の金魚鉢は。楽しみで魚の命を奪う釣りは。残酷ではないのか。マグロは食べるけど、クジラはかわいそうなのか。倫理の海に深く潜るほどに、うわべの「正論」で切り捨てられなくなる

▼人は多くの命をいただいて生きている。ある意味、残酷な存在だ。ならばこそ、かまぼこは、ととから作られていることを知り、その命への感謝を忘れずにいたい。


=2016/11/30付 西日本新聞朝刊=

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