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30年ほど前、初めてお会いした時から「声の小さい方だな」という印象を受けた…

 30年ほど前、初めてお会いした時から「声の小さい方だな」という印象を受けた。口ごもるような話しぶりで、耳を傾けないと聞き逃すほどの小声で話すのが常だった

▼それも後遺症のためと知る。息をいっぱい吸い込むと体が痛むので、大きな声を出せないのである。背中は熱線で焼かれた。1年9カ月もの間うつぶせで治療したために、胸の筋肉も変形していた

▼谷口稜曄(すみてる)さんが一昨日、亡くなった。88歳だった。16歳のとき、郵便配達中に長崎原爆に遭う。山口仙二さんたちと被爆者運動の先頭に立ち、世界に向けて核兵器の非人道性を訴え続けた生涯だった

▼声は小さくとも言葉は力強く、時に激しかった。7月、入院先で撮影されたビデオがある。国連での核兵器禁止条約採択を歓迎しつつも不参加の日本を非難し、今後の不安も示唆。「生き残った被爆者が頑張らないといけない」と、なお使命感を口にしていた

▼新婚旅行で妻の栄子さんに「背中を流してくれ」と頼んでいる。初めて見る傷痕に新妻が息をのみ、すすり泣きするのが分かった、という。人前でも必要とあらば自らの体をさらした。原爆のむごさを見て知ってほしい。そんな一念からだった

▼被爆後の半生を「生きることは苦しみに耐えること」とまで語った稜曄さん。不自由な体ごと発したメッセージの数々は引き継がれていく。核兵器廃絶という被爆者たちの悲願がかなう日まで。


=2017/09/01付 西日本新聞朝刊=

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