将棋の王将はチェスのキングより孤独だ…

 将棋の王将はチェスのキングより孤独だ。王将にはいないが、キングのそばにはクイーンがいる。クイーンは飛車と角の両方の動きができる最強の駒。チェスは妻の働き次第で勝負が決まるゲームでもある

▼もう一つ大きな違いが。取った相手の駒を自分の駒として使えるかどうか。チェスは取られたら、それまで。将棋は配下だった駒が敵に寝返って襲い掛かってくる。王将はつらい

▼孤独な王将を強敵から守り、勝ち星を重ねてきた棋界の王である。羽生善治さん。竜王戦7番勝負の第5局に勝って「永世竜王」の資格を得た。これで、永世称号制度のある竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖の7タイトル全てで「永世」に。前人未到の快挙を成し遂げた

▼15歳で史上3人目の中学生プロ棋士となり、19歳で初タイトルの竜王位を獲得。1996年には史上初の全7冠同時制覇。今回の「永世7冠」に続き、通算タイトル獲得数100期にも王手をかけた。どれほど厳しく、孤独な道のりだったことか

▼妻は元タレントの畠田理恵さん。婚約した理恵さんが羽生さんの家を訪ねた時のこと。羽生さんは「ごめん、ちょっと待ってて」と隣室へ。そのまま3時間、パチパチと研究に没頭したそうだ

▼希代の天才とはいえ、孤独な偉業に妻の支えも大きかったろう。理恵さんのツイートによれば「(羽生さんは)家に居る時はカピバラみたいなんですよ」。


=2017/12/08付 西日本新聞朝刊=

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