深海に「クマサカガイ」という巻き貝がいる…

 深海に「クマサカガイ」という巻き貝がいる。円すい形の貝殻の表面に他の貝の殻や小石などを粘液でくっつけている。変わった名前は平安時代の伝説の盗賊「熊坂長範(くまさかちょうはん)」から

▼歌舞伎などに登場する長範は太刀や薙刀(なぎなた)など多くの武器を背負っている。いろんな物を殻に付けた貝の姿は長範を連想させたのだろう

▼「アベガイ」もいろんな武器を背負いたがるようだ。北朝鮮の核・ミサイルに対抗するための地上配備型迎撃ミサイルや長距離巡航ミサイルの導入、中国の海洋進出を視野に護衛艦を「空母」化する計画も

▼敵の基地を先制攻撃することが可能なミサイルや、戦闘機が発着できる空母を持つことは、日本が大切にしてきた「専守防衛」から逸脱する恐れがある。本当に必要なのか、憲法には抵触しないか。本来、大いに議論すべき問題だ

▼集団的自衛権の行使容認や武器輸出三原則の見直しなどもしかり。官邸の深い海の底で決め、1強の力で押し切るのがアベガイの習性か。「武器を買って」という米国からの強い潮の流れにあらがえず、血税を注ぎ込んでいるようにも

▼クマサカガイの習性は、敵の目をくらますためとも、自分の殻を強化するためとも。二枚貝の殻を身に着けるときは、空の内側が見えるようにくっつけるという。死んだ貝のように見せて戦いを避ける狙いか。勇ましい長範よりも巻き貝の知恵の方が、平和国家にはふさわしい。


=2017/12/29付 西日本新聞朝刊=

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