新しい年が始まった…

 新しい年が始まった。ことしの干支(えと)「戌(いぬ)」にちなんだ物語の代表は、江戸時代の戯作(げさく)者、滝沢馬琴が残した「南総里見八犬伝」か。不思議な縁で結ばれた8犬士の活躍にわくわくする

▼仲間の証しは8人が一つずつ持っている水晶の玉。それぞれに別の字が浮かび上がる。人を思いやる「仁」。正しいことを行う「義」。相手に敬意を払い、作法を守る「礼」。物事を正しく判断する「智」。偽りのない心で果たすべき任務を尽くす「忠」。約束に背かない「信」。父母を大切にする「孝」。兄弟が仲良くする「悌(てい)」

▼話は飛ぶが、吉野源三郎が戦前、少年向けに書いた「君たちはどう生きるか」が昨年、漫画化されて話題になった。暴力や貧困など現代にも通じる問題と向き合う少年が、苦悩しながら成長するストーリーだ

▼「どう生きるか」。作者は読み手にも問い掛ける。けれど、作品の中に答えはない。読み手一人一人にそれぞれの答えがあり、自分で見つけるしかないからだ

▼初詣で手を合わせ息災を祈る。真新しいカレンダーに未来を書き込む。そんな折に触れ、この一年をどう生きるか、自分なりに考えてみたい

▼そう簡単には浮かばない、という人は八犬伝をヒントにしては。仁・義・礼…。思いやりを忘れないのもよし。約束を破らないのもよし。もちろん親孝行も。一つでいい。大切な玉を心に持ち続ければ、良い一年になること間違いない。


=2018/01/01付 西日本新聞朝刊=

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