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【少子化の放置が招く亡国】 藻谷 浩介さん

藻谷 浩介(もたに・こうすけ)さん=日本総合研究所調査部主席研究員
藻谷 浩介(もたに・こうすけ)さん=日本総合研究所調査部主席研究員
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◆日本の未来 田舎にあり

 以下は、地方在住の方から筆者に届いた、筆者の講演への感想メールの一部である。

 「講演を聴くまで、地方創生という言葉に違和感を覚えていました。人口が減ってゆく中で、現実になくなっていく村や町がある。人口が大都市に集中するのは必然の流れだと、安直に考えておりました」

 このメールが示すように、「人口が減る中で、消滅する村や町が出る」という見通しは、地方在住の方々の間にも浸透しているらしい。広く喧伝(けんでん)された「市町村の半分に消滅の可能性がある」という話は、油断を極めた関係者の尻をたたくための一種の極論だったのだが、これがいつの間にか「多くの自治体は消滅する運命にある」というイメージを、世に植えつけてしまったのだろうか。

 「田舎町が消滅するのは当然だろう」と考えたあなたは、まったく高齢社会の現実がわかっていない。日本人の4人に1人以上はすでに65歳以上なのだ。彼らの多くが年金を頼りに大都市の住宅地で生活しているのと、多くが自給農業などを営みながら田舎で自活しているのでは、国の財政や活力にも巨大な相違が出る。「生産性の高い大都市に人口を集中させた方が経済成長できる」というのは、国民の大多数が現役世代だった、平均寿命の短い時代の発想で、21世紀にはまったく妥当しない。高齢化が進むほど、お金のかからない田舎での生活も選択できる、柔軟な社会構造が大事なのだ。

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 だが、さらにもっと大事なのは「田舎町の消滅は、そこから流入する若者で成り立ってきた大都市の消滅でもある」という現実を理解することだろう。

 全国でいえば首都圏1都3県、九州でいえば福岡市では出生率が低く、25~39歳の男女100人に対して0~14歳の子供は60人前後しか住んでいない。本来なら住民の加齢とともに人口が減るところ、15歳以上の若者を田舎から集め続けることで、何とか総数では微増を保っている。

 しかしその分、若者を失った田舎では子供が減り、日本全体では過去40年間に、毎年生まれる子供の数が半分になってしまった。あまりに田舎の子供が減ったので、今後は大都市に流入する若者も年々減らざるをえないのである。

 もし出生率が相対的に高い田舎から都会への若者流入が少なければ、日本全体の子供の数は今よりずっと多く、都会もそれほど過密にならずに出生率もここまで下がらなかっただろう。過去はもう戻らないが、今後も事態を放置しておくことは亡国への道だ。

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 人吉盆地の一角を占める熊本県多良木町は2014年、たった1人の転入生のために、中心部から険しい峠を越えて19キロ離れた槻木(つきぎ)集落の小学校を再開した。大議論の末の、子育て支援を最優先するとの決断だった。

 「日本の片隅にあるわが町を残すには、町の片隅にある集落を残すことから」という姿勢が、町民にも浸透したのだろうか。15年国勢調査では、過去急減してきた0~4歳の乳幼児の数が5年前に比べほぼ下げ止まった。25~39歳の男女100人に対して0~14歳の子供は121人の比率であり、この次世代再生産ペースを維持できれば町の消滅は遠のく。子供の3倍もいる高齢者が亡くなることで総人口は減るが、それは実は町が年々若返っていくということだ。多良木町だけではない。そのような過疎自治体が、いま九州各地で増えつつある。

 日本の未来は、子供が生まれない大都市部にではなく、子孫繁栄を大事に思う田舎にこそある。そのことに気づくことが、日本存続の唯一の道だ。九州はぜひ先頭に立ってほしい。

 【略歴】1964年、山口県徳山市(現周南市)生まれ。88年東京大法学部卒、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)入行。米コロンビア大経営大学院で経営学修士(MBA)取得。2012年1月から現職。著書に「デフレの正体」「里山資本主義」など。


=2017/03/05付 西日本新聞朝刊=

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