フランス参加 なぜ? 編集委員 井手 季彦

 2003年、米国と英国を中心とした有志連合は、大量破壊兵器の保有を理由にイラクを攻撃した。このとき強く反対し「査察を通してイラクの軍縮を進めよう」と主張したのがフランスだった。後にイラクから大量破壊兵器が発見されなかったこともあり、フランスの国連重視の姿勢、冷静さに拍手を送った人も多かったと記憶している。それから15年、今回のシリアへの攻撃には米国、英国に加え、フランスも参加した。フランスは変わったのだろうか。

 トランプ米大統領はアサド政権が化学兵器を使用したとして「怪物による犯罪」とテレビ演説したが、さすがにフランスはそんな軽い言い方はしない。攻撃直後に、化学兵器に関する情報を詳述した10ページにわたる文書を発表。ルドリアン外相が「4月8日夕刻、ダマスカス近郊のドゥーマ地区で致死的な襲撃が複数回行われた。シリア政権が実行したという信頼性の高い情報も得ている」と、科学分析機関の名も挙げて言明した。

 1920年から46年までフランス軍がシリアを委任統治領とするなど両国の縁は深い。しかもシリア難民が多く流入したフランスでは、人道的関心の高さもあって早くから化学兵器問題が報道されてきた。子どもを含む多くの人々が犠牲になっていることを国際社会に訴えるデモも度々行われてきた。イラクの場合より、フランス市民の中にシリア攻撃を受け入れやすい土壌が整っているともいえる。

 もちろん反対もある。右派の元首相フィヨン氏は「戦争に戦争を重ねても平和は決して訪れない」と批判。極右のルペン氏は「それぞれが小さな戦争をしたがっている。終わりのない世界のようだ」と言う。彼女の発言が何を意味しているのか明確ではないが、戦争が起きて喜ぶのは、いつの時代も兵器を造って売る「死の商人」。今回は米国が駆逐艦から巡航ミサイル「トマホーク」を発射。遠距離から精密に攻撃できるB1戦略爆撃機でも空爆。英国はトーネード戦闘機を用いて空中発射型巡航ミサイル「ストームシャドー」で爆撃。フランス軍はフリゲート艦4隻、ミラージュ戦闘機、ラファール戦闘機を出撃させた。まるで自国製兵器の見本市のようだ。

 いずれにしても荒廃したシリア、化学兵器にやられたであろう人々の映像を見ると心が痛む。平穏を取り戻し、難民が帰還できる日が、さらに遠くなったような気がする。

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 ▼いで・すえひこ 長崎県佐世保市出身。九州大理学部卒。整理部、日田支局、久留米総局、パリ支局などで勤務。3月まで夕刊コラム「ワールド望遠鏡」担当。

=2018/04/17付 西日本新聞朝刊=

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