タイ新国王即位 ワチラロンコン氏 議長要請を受諾

 【バンコク浜田耕治】タイのワチラロンコン皇太子(64)は1日、暫定議会議長の要請を受諾し、新国王に即位した。新たな国王の誕生は70年ぶり。10月に88歳で死去した父のプミポン前国王は絶大な人気と権威を持つ国政の「重し」だっただけに、政局が一時的に不安定化する恐れがあり、新国王にとっては試練の船出となりそうだ。

 新国王はチャクリ王朝10代目君主の「ラマ10世」となる。戴冠式は来年10月ごろに予定される前国王の葬儀後になる見通し。

 タイは1932年に「主権在民」を掲げて絶対王政を廃止した。国王は国家元首で政治とは距離を置くものの、軍を統帥するなど強い影響力を持つ。

 プミポン前国王は騒乱が起きると仲裁に乗り出し、国の危機を収めた。クーデターですら前国王が承認しなければ成功しない。タクシン派政権を追放した2014年のクーデターも、前国王がプラユット陸軍司令官(現・暫定首相)を承認したことで「正当性」を得た。

 こうした権威の背景には、プミポン前国王自身が築き上げた絶大な人気と信頼がある。

 中部サラブリ県では、国民の生活向上のために全国で進めた「王室プロジェクト」による農地改良で農家の収入が3倍になった。農業男性(53)は「前国王がいなかったら今の暮らしはない」と言い切る。

 新国王は海外生活が長く、今から偉大な父の後を追うのは難しい。どのような国王像を目指すのか不透明で、国内に不安感が漂う。

 一方で課題は山積している。この10年、タイでは農民や都市貧困層の支持を集めるタクシン元首相派と、軍や官僚、財界を中心とした既得権益層(反タクシン派)が対立し、騒乱が相次いだ。分断の火種は今もくすぶったままだ。

 14年のクーデターで発足した軍事政権は、タクシン派や民主化を求めるグループを強権で抑え込んできた。「王室の求心力低下は否めず、今後、軍が存在感を増すのは間違いない」(研究者)との声もある。

 近く公布される見通しの新憲法には、選挙に強いタクシン派が単独過半数を取りにくい仕組みが導入され、来年末に予定される総選挙後も5年間は軍の影響力を温存させる内容が盛り込まれた。

 ただ、6年ぶりの総選挙を機に対立が再燃する恐れもある。

=2016/12/02付 西日本新聞朝刊=

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