五輪で融和演出 米には強硬 北朝鮮「新年の辞」 韓国南北協議を提案

 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が1日の「新年の辞」で、2月に開幕する韓国・平昌冬季五輪に選手団を派遣する意向を表明した。韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は早速2日に南北の高官級会議を呼び掛け、五輪をきっかけにした対話に乗り出した。ただ、金氏は核兵器の実戦配備を加速させる方針も強調し、米国を威嚇。方針転換とも受け止められる突然の南北融和策には、米韓同盟を揺さぶって国際社会の北朝鮮包囲網を突き崩す狙いがあるとみられ、日米には警戒感が広がった。

 「(朝鮮半島の)軍事的挑発を緩和し、平和的な環境づくりに向け(南北が)協力して努力しなければならない」-。1日午前、北朝鮮の国営メディアに登場した金氏は、グレーのスーツに眼鏡姿で、こう強調した。約30分間の演説のうち約4分の1を南北関係に割き、これまで言及してこなかった韓国の平昌冬季五輪について「成功を心から願う」と明言した。

 昨年5月の就任時から南北対話路線を掲げてきた韓国の文政権は1日夕、金氏の発言を「歓迎する」と表明。翌2日には統一省が9日に南北軍事境界線にある板門店で北朝鮮選手団の五輪参加をテーマにした高官級協議を開催するよう提案した。北朝鮮は昨年9月の五輪最終予選でフィギュアペア出場枠を獲得。これまで五輪出場の意思を示していないが、金氏の発言で「北朝鮮の出場は固まった」(聯合ニュース)とみられる。硬直していた南北関係がじわりと動きそうな気配だ。

 一方で金氏は、米国に対する威嚇のレベルは上げた。昨年11月29日、米本土全域を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星(ファソン)15」の打ち上げに「成功した」と主張したのに続き、演説では「核弾頭と弾道ミサイルを大量生産し、実戦配備に拍車を掛ける」と表明。「核のボタン」を常に握っていると強調し、「これは脅しではない」とけん制した。

 韓国を懐柔するような姿勢の半面、米国への敵意をむき出しにした金氏の狙いについて、韓国の専門家は「米韓同盟に亀裂を生じさせて国際社会の足並みを乱し、国内経済の危機を打開したいと考えているのでないか」と予測する。国際社会では北朝鮮への影響力を持つ中国とロシアの“本気度”も疑われている。昨年末には、トランプ米大統領が、中国が北朝鮮にひそかに石油を供給しているとして「とても失望している」とツイッターに投稿した。

 「わが革命は前例のない厳しい試練に立たされている」。金氏は国際社会の厳しい制裁で国家建設が危機にひんしている現状を、こう訴えた。追い込まれた北朝鮮は建国70年の節目の今年、「核保有国」として、米朝対話に持ち込むシナリオの仕上げに乗り出すとみられる。「どの国も戦争は望んでいない」。日本政府当局者は北朝鮮の出方を見守る考えを示しつつ、警告した。「北が核にこだわる限り、米国が軍事オプションの準備をやめることはない」 (ソウル曽山茂志、ワシントン田中伸幸)

=2018/01/03付 西日本新聞朝刊=

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