対北朝鮮で日韓に温度差 首相、急接近に懸念 平昌で首脳会談

 【ソウル曽山茂志】韓国・平昌で9日開催された安倍晋三首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領の首脳会談は、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、圧力を最大限まで強めることで一致した。ただ、首相が金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の妹、金与正(キムヨジョン)氏らの韓国入りを念頭に「『ほほ笑み外交』に目を奪われてはいけない」と迫ったのに対し、文氏は対話の重要性を訴え、両国の温度差も浮かび上がった。

 「取り越し苦労だ」-。日韓両政府によると、文氏は平昌冬季五輪の北朝鮮参加表明をきっかけに急速に進んだ「南北融和」ムードに懸念を示す首相に対してこう返した上で、「この(南北融和の)雰囲気を生かせるよう、日本も積極的に対話に立ち向かってほしい」とやんわりと反論した。

 北朝鮮は8日、平壌で軍事パレードを開催。米国本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星(ファソン)15」などを多数出動させた。パレード時間は例年より短く、翌日の五輪開幕に配慮して規模を縮小したとみられるが、核・ミサイル開発を継続する意思を示したことには変わりなく、日本は「断じて容認できない」(菅義偉官房長官)と厳しく批判した。

 北朝鮮への圧力強化を確認した日韓首脳会談の約1時間後、文氏は五輪開幕を祝うレセプション会場に移り、北朝鮮が派遣した党序列2位の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員長らを笑顔で迎えた。ところが、聯合ニュースによると、首相とペンス米副大統領は定刻の午後6時になっても現れず、別室で待機したままだった。

 乾杯の後、文氏は首相とペンス氏が待つ部屋に出向いて3人で記念撮影。「北朝鮮への圧力強化で日米韓は一枚岩だ」との演出だったが、レセプション会場に入ったペンス氏は金永南氏と握手もせずに5分程度で立ち去ったという。予想外の日米2人の行動について韓国では「非核化の意思がない北朝鮮と対話ムードを高める文政権への不満を示した」との見方が出ている。

 日米との足並みの乱れを露呈させた文氏は10日午前、北朝鮮の金正恩氏が最も信頼する人物とされる与正氏と会談する。与正氏はその場で、文氏を北朝鮮建国70年の今年中に平壌に招待するとの観測もある。文氏が受ければ、日米との溝がさらに深まりかねない。「正恩氏が無意味に最側近を送り込むはずがない」。外務省関係者は、五輪を利用して硬軟織り交ぜながら国際社会を揺さぶる北朝鮮の次の一手に警戒を強めた。

=2018/02/10付 西日本新聞朝刊=

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