西日本新聞

無敵の秘密 最強対談フルバージョン 東福岡高ラグビー部・相原昇監督 × 東九州龍谷高バレー部・谷崎重幸監督

 最強チームの指揮官が対談した。第55回西日本スポーツ賞を受賞した東福岡高ラグビー部の谷崎重幸監督(51)と、東九州龍谷高バレーボール部の相原昇監督(41)。ともに2009年度は国内の高校チームに無敗で、東福岡高は春冬の全国大会を制し、東九州龍谷高は「高校3冠」とともに全日本選手権でプレミアリーグ勢を連破した。その強さの背景には何があるのか。両監督の対談の全てを紹介する。(※対談日は2010年1月28日)

谷崎 重幸
東福岡高ラグビー部監督
谷崎 重幸(たにざき・しげゆき)
1958年4月17日生まれの51歳。三重県出身。三重・志摩高~法政大でSOやFBでプレーし、卒業後の82年から東福岡高ラグビー部監督。選手で1回、監督として20回全国高校大会に出場し、2007年度と09年度で優勝。主な教え子に元日本代表SHの村田亙・7人制日本代表監督や元U-20日本代表フッカー有田隆平(早稲田大3年)ら。
相原 昇
東九州龍谷高バレー部監督
相原 昇(あいはら・のぼる)
1968年7月2日生まれの41歳。東京都出身。東京・東洋高から日体大へ進み、セッターとして全日本大学選手権で優勝。卒業後は高松北高(香川)で9年間指導した後、2004年から東九州龍谷高の監督に就いた。同校では06、08、09年の高校選抜大会、08、09年の全国高校総体、単独チームで臨んだ09年の新潟国体で優勝。主な教え子に、北京五輪日本代表セッターの河合由貴(JT)ら。
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チームに愛を全部注ぎ込んでいこう

Q 最強といわれたチーム振り返って、どういうことを考えて戦ったか

対談する東九州龍谷高バレーボール部の相原昇監督(左)と東福岡高ラグビー部の谷崎重幸監督対談する東九州龍谷高バレーボール部の相原昇監督(左)と東福岡高ラグビー部の谷崎重幸監督

相原監督(以下、相原) 全国制覇というより、最高のチームをつくることに徹底しました。
2008年に地元大分で行われた国体の決勝で1セットを取りながら敗れた。それ以来、(結果ではなく)最高のチームをつくることが勝つことにつながる、全部勝たないとそこに到達しないということで、結果じゃなくて最高のバレーボールを追求しようとやってきました。
僕はU-20(20歳以下)日本代表の監督をしていたのですが、それも辞退しました。代表にも選手がだいぶ選ばれていたけど、みんな辞退して自分のチームに全力を注いだ。「チーム愛」ですよね。チームに愛を全部注ぎ込んでいこうよとやった結果が、どんな接戦や逆境になっても仲間を信じて最後まで勝つという結束力になりました。

谷崎監督(以下、谷崎) 一緒ですね。結果を求めても結果は出てこない。
4月の全国選抜大会ですごい点数で優勝したので、その以来、求められるものが高くなった。生徒に背負わせて乗り越えていくという指導方法もあったと思いますが、スポーツとして競技を楽しませた。ゲームやプレーは「遊び」と訳せる。中身の濃い、質の高いプロセスにこだわった結果がこうなりました。
一番心配しているのは、次のチーム。(前のチームを)背負えば背負うほど、求められるものが高くなる。本当は幸せなことなんですけどね。勝てば勝つほどハードルが高くなりますから。つらく、苦しいものになると思う。そのつらいの背中合わせに「楽しい」があると思う。

Q 1年間の中でピンチもあったんじゃないですか?

相原 僕は何事もピンチと思わないようにしている。逆にそれを乗り越えたら強くなるな。ビタミン剤になるな、と。

谷崎 質の高い中身にこだわり、どんなときも楽しんでいたから、ピンチというのはありませんでした。勝ったり負けたりとか、乗り越えたとかではなく、全部それがエネルギーになる。公式戦は負けたくなかったけど、練習試合では「苦しめ」と思いましたもん。おごりたかぶらないように。

Q 日本一のチームをつくるには長い時間がかかりますよね?

相原 日本一のチームにするには名門チームにしていかないといけない。名門というのは、過去の先輩を受け継ぎ、さらにどんどん発展していかせる。1回勝っただけで大騒ぎして過信したら一発屋になる。
負けるときもあるけど、次の栄養にしなければいけない。でも、監督はずっとできるけど、選手たちは3年間負け続けたら泣くことになる。選手にとってはワンチャンス。幸せにさせるためには(チャンスを)逃したらいけない。
うちはエースが3月の春高バレー(全国選抜優勝大会)の後にひざの皿の疲労骨折で出られなかった。それで1年生が出て3冠を取っている。僕は全員を教える。誰が出ても勝てることを目指していこうよ、と。そうしたらみんな仲良くなるし、心強くなる。
 だから心強くなったときはピンチになったときも乗り越えられる空気がある。よく「空気感染」というけど、僕はよく、「(いい雰囲気を)空気感染させろ」と言っています。

谷崎 僕は先輩たちがこうだったとは言わない。卒業していきますから、新しい素材で新しいチームができる。いかに新しい選手の個性を認めるか。お互いに認めるように理解しあっているかが大切だと思っています。

相原 今の選手と向き合っているというのが大事と言う点で共通しています。

Q 東九州龍谷高はコンピューターのソフトを使って対戦相手を分析していると聞きますが。

相原 イタリアのソフトを世界中が使っている。リードブロックとか、あらゆるデータを打ち込める。映像にしてそこのフォーメーションやスパイカーだけを連続して映したり。何でもできる。プレミア勢はデータ通りにしてくる。うちは独自の分析の仕方、ほかとは違う独自の対策をする。データ分析は高校生相手にもしています。

谷崎 うちはデータ分析をしません。花園でも試合を見ていて「うちだけ違うな」と感じると思います。みんな(データ分析を)やっているので同じラグビーする。それがうちだけ違うので大学生のラグビーとか異次元のラグビーとかいう言葉で表現された。

相原 やっぱり、はた目からみたら「このチームは違うな」というのを一つつくることが大事。同じものをつくっても勝てないですから。オリジナルラグビー、バレーをしないと。

Q 男女で指導法は違うと思います。女子を教えるのは難しいと思いますが。

相原 選手と監督の距離感、選手同士の距離感がちゃんとできれば、成功すると思います。僕は選手個々とコミュニケーションを取らない。平等が基本ですから。声かけるにしても全体に言う。一人に言ったり、一人に何かあげたりとか絶対にない。だから和が保たれる。特に女子には絶対そう。それができなかったら失敗します。
女子も男子も一緒かもしれないけど、平等にしながらエースをつくる難しさがある。毎日の指導で平等にしながらエースをどうつくるか。VIP扱いしたらエースはできるかもしれないけど、ほかの人(の力)は落ちていきますから。集団競技ですから全体を底上げしながら、こいつはというのをつくらないといけない。

谷崎 僕は、男だから女だからというのは分からない。男ばかり(男子校)だからね。

相原 女子は、「こうだから」と説明するほど崩れていく。指摘したらプラスになるかというと違う。それよりも何気なく自信を持たせていくようなことの繰り返しです。

[2] 失敗を経験し指導者が変われたら成功する >>

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