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佐賀県・松浦川 寒バヤ、冬の風物詩 15センチ、柔らかい手応え

2009年1月20日 カテゴリー:佐賀 / 淡水魚 / 釣りニュース

 寒バヤ釣りは冬の風狂である。冬ざれた風景の中で、独り、川辺で水面の浮きを眺める釣りは、ある意味では日本独特の詩的情緒かもしれない。そんな世界にちょっと触れたくて佐賀県・松浦川に出掛けた。 (香月駿一郎)

 ハヤ(オイカワ)釣りですぐに思い出す映画は巨匠、小津安二郎監督の「父ありき」だ。寡黙な父子をつなぐものがハヤ釣りである。そのシーンは2カ所しかないが、この映画を奥深いものにしている。私の父は既に他界しているが、少年時代、同じように父と一緒にハヤ釣りをしたことも重なり、この映画を印象的なものにしている。

 ハヤ釣りはその道のベテランも少なくない。私は初心者に近いがまず、釣り場ですることは寄せ餌を団子状にしてポイントに投げ込む。それからおもむろに、ハヤ用の長びくを横にセットする。

 映画でのハヤ釣りの餌はミミズだ。各人、好みがあろうが、私はいつもクリムシを使っている。5メートル前後のハヤざおに浮きは友人が製作したオリジナルの長浮きだ。

 流れはゆったりとしている。1回流すが、当たりはない。2回、3回…。浮きはぴくりともしない。浮き下を何度か変えながら打ち返していると、ようやく当たりが出た。軽く合わせると針掛かりした。さおが柔らかいだけに、それだけの手応えがある。白く美しい魚体だ。大事にびくに入れる。

 入れ食いにはならない。腕のせいか、それとも冬だけに食いが悪いのか。3時間で15センチ前後が7尾というのがこの日の釣果だった。ハヤ釣りのプロに言わせれば「下手だ」ということになろうが、静かに流れる時間と川のなかで、この釣りの情緒をいくらかは味わうことができた。

 小津は映画でなぜ、ハヤ釣りにしたのか。フナでもコイでもない。ハヤという小さく、清楚(せいそ)な魚のイメージは日常を清く淡々と描く「小津ワールド」にはやはり、一番似合った魚だったと思える。


=2009/01/20付 西日本新聞夕刊=


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