49センチの腹太チヌ 早くも乗っ込みに 長崎県西海市の大島
3月6日、啓蟄(けいちつ)。こぼれるような春の陽光に大地が暖められ、冬ごもりの虫がはい出して来るころ。野山では桃の花がほころび、鳥がさえずり、海中では魚族が産卵の準備に忙しい。啓蟄前の3月2日(日)、予定の五島釣行は強風で中止となった。が、長崎県佐世保市在住の私には「五島がダメなら大島(同県西海市)があるさ」。リアス式海岸の多い長崎県、台風の日以外は釣りができる。 (米山 保)
休日の遅い昼食が済んだころ、「釣りに行きましょうか」と妻。もちろんOK。夫婦そろって釣り好き、魚好き。日没まで釣りを楽しめば、こよいはおぼろ月夜の下“釣り魚で一杯”となる。“春宵一刻値千金”釣り師ならではの特権? だ。
午後3時、崎戸港着。風裏とはいえ、回り風が強いのでオキアミ2角と集魚剤をしっかりと練り込み、チヌの仕掛けを作る。その間、相方はエギでイカ狙い。釣れれば夕食は豪華版となる。が、30分やって空振り。「風が強くて当たりが取れない」とぼやいている。
3時半、チヌ釣り開始。まずは仕掛けを船道に入れ、潮の様子をうかがう。すると長潮の満潮時で流れない。チヌは意外性の魚。が、潮止まりは釣りにならぬだろう。私はさおを置き、堤防の散歩としゃれ込んだ。清少納言は「春はあけぼの」だが春は海も素晴らしい。柔らかい風にもまれ、キラキラと輝く海面、磯の香も新鮮だ。
と、その時、背後で悲鳴。「何事か?」と振り返れば、妻のさおが「つ」の字。食ったということは、底潮が動いたのか。慌てて駆けつけると、妻の目はつり上がり必死の形相だ。が、応援すれども手は貸さぬ。釣りはすべてを自分でやってこそ価値がある。
2分後、女神は妻にほほ笑んだ。49センチのチヌ。腹がパンパンだ。早くも乗っ込み(抱卵魚が産卵のため移動すること)が始まったらしい。それを知った妻は「元気な卵をいっぱい産んでね」と海に返した。夕映えの空に渡り鳥が隊列を組んでいる。


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