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医療的ケア児 制度のはざまで 一時預かりの受け皿乏しく 法改正でも 対応進まぬ現場

川津有紀さんにたんの吸引をしてもらう白水逞磨君
川津有紀さんにたんの吸引をしてもらう白水逞磨君

 障害や病気のため、人工呼吸器などの医療的ケアを受けながら在宅で暮らす子どもたちが増え、昨年成立した改正障害者総合支援法は「医療的ケア児」への支援を初めて明記した。ただこうした子どもたちの一時預かりに対応できる保育所や福祉施設はほとんどなく、子どもと家族を支える社会の仕組みは整っていない。

 福岡市博多区。午後3時ごろ、児童発達支援事業所「ひだまりのおうち」で白水逞磨(たくま)君(4)は昼寝から目を覚ました。

 睡眠時に呼吸が止まる先天性の肺胞低換気症候群のため、寝るときは気管切開した喉に人工呼吸器を付ける。体を起こし呼吸器の管を外そうとした逞磨君に事業所の川津有紀代表(42)が声を掛けた。「まだだよ、まず大人に起きたことを知らせよう」

 職員に見守られながら自分で呼吸器を取り外して電源を落とし、川津さんに駆け寄り口をちゅっちゅっと鳴らす。喉が渇いた合図だ。その様子を母さくらさん(21)は「こんな日が来るなんて」と見つめた。

 生まれてすぐに重い疾患が判明し、生後半年間は新生児集中治療室(NICU)で過ごした。自宅で暮らし始めても、夜中にかんしゃくを起こして喉の管を引き抜いたり、興奮して呼吸が止まり、心肺蘇生が必要になったりすることは日常茶飯事だった。

 逞磨君が1歳になる前から、さくらさんは、あちこちの福祉施設に一時預かりを打診したが「うちでは難しい」と軒並み断られた。2歳半のときにようやく出合ったのが「ひだまり-」だった。今は週に数日通う。

 「あの頃はとにかく毎日睡眠不足で、本当に思い詰めていて。今考えると限界だったと思います」

      □

 医療的ケアが必要な子どもたちの居場所を今の社会で見つけるのは難しい。

 認可保育所は障害児の受け入れもうたっているが、介助を担える職員が十分でなく、逞磨君のような子は大抵拒まれる。福岡市の場合「集団保育が可能かどうかが受け入れライン」(担当課)としている。

 では「障害福祉サービス」はどうか。逞磨君は身体障害で最も重度の1級。未就学の障害児を預かり生活訓練などを行う「児童発達支援」の対象になる。だが受け入れた事業所に渡る報酬は、重度の肢体不自由と知的障害がある「重症心身障害児」の半分以下。同じぐらいの見守りが必要なのに報酬が低いので、受け入れには消極的になる。

 医療的ケア児は既存の制度のはざまに取り残されてきた。訪問看護師をしていた川津さんが医療的ケア児のために開設した「ひだまり-」は極めてまれな施設だ。

      □

 施設で生活指導を受けた逞磨君は今ではかんしゃくが減り、呼吸が止まることもほとんどなくなった。「できることが毎日増えてます」とさくらさんは喜ぶ。

 医療的ケア児は厚生労働省の2015年度の推計で約1万7千人。医療の進歩を背景に05年度の約1・8倍に増えている。

 昨年の法改正は、こうした事情を背景に、自治体による支援を努力義務として盛り込んだ。関係者は18年度の障害福祉サービスの報酬改定にも期待を寄せる。

 ただ現場の対応力を高めなければ門戸は開かれない、と川津さんは指摘する。学齢期の障害児を預かる「放課後等デイサービス」も受け皿としては不十分。「専門的な看護師の育成や、職員のスキルアップが急務。最終的には地域の誰もが医療的ケア児を見守れる社会を目指すべきです」

    ×      ×

 【ワードBOX】医療的ケア

 たんの吸引や管を使った栄養注入など、日常生活に必要とされる医療的な生活援助行為。医師の治療と区別する用語として定着してきた。医療的ケアができるのは医師・看護師・家族だけだったが、近年は研修を受ければ、施設の介助担当職員や教員も行える。


=2017/02/11付 西日本新聞朝刊=

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