地元遺産へ誘う

「遺産」から見える未来

内門デスク
いつの頃からか「○○遺産」「○○検定」という言葉をよく聞くようになった。あるいは「聖地」という言葉。それぞれ従来よりも広い意味をさして使用され、地域の価値を再発見する便利なアイコンとなっている気がする。

今回は、特に「遺産」に着眼して、同僚たちと取材を進めてきた。「○○遺産」と言っても、自然遺産から産業遺産、さらに世間遺産まで実に幅広く、正直どこまで広げて取り上げるのか迷いに迷った。ある意味、何でもありなので収拾がつかないのである。

ただ、あえて範囲を限定せずに「遺産」にこめられた人々の思いを追いかけたつもりだ。そこから見えてきたものは明確ではない。ただ、「遺産」を含めた一連の便利なアイコンとなっている言葉は後退戦を強いられた地域の人々の危機感を反映した言葉なのかもしれないと、ぼんやりと思った。

ほっといても未来へ継承されるのであれば、わざわざ「遺産」なんて名付けなくともよいはずだ。そういう意味では、日本人にとって当たり前のようにそこにあると思われている富士山や和食が「遺産」と名付けられたことには複雑な思いもする。長崎の端島(軍艦島)が象徴的だが、「遺産」と名付けられたその対象は既に消滅へのカウントダウンも始まっているのだ。

余談になるが、同僚たちとの話し合いの中では、「新年特集を紙で発行することも『遺産』ではないか」「いやいやそういうなら新聞の輪転機も、そもそも新聞そのものだって『遺産』になるかもしれない」という声も上がった。「○○遺産」というと、過去や歴史と関連付けてイメージしがちだったが、未来を豊かに想像させてくれるものでもあることが分かった。それが今回の特集を担当して一番の発見だったかもしれない。

(内門博)

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