
農地造成と防災を目的に、長崎県諫早湾奥部を長さ約7キロの潮受け堤防で閉め切り、672ヘクタールの干拓農地と2600ヘクタールの調整池を整備した。1989年着工し、97年4月に堤防排水門が締め切られた。2007年11月完工。総事業費2533億円。有明海の養殖ノリ不作などとの因果関係を指摘する佐賀県側は、早期開門を主張。長崎県側は、開門による干拓地の塩害や防災機能の低下を懸念し、開門に反対の立場。佐賀地裁は08年6月、因果関係を一部認め、5年間の常時開門を国に命じたが、国は控訴。現在、福岡高裁で係争中。
(2010年3月10日掲載)
国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門を開門するかどうかを協議する政府・与党の「諫早湾干拓事業検討委員会」が9日、初会合を開いた。検討委には、地元選出の与党議員も加わり、長年の地域間対立に終止符を打つ「政治決断」に向けた議論が始まった。ただ、開門の可否は地元合意が前提。環境悪化など地元の懸念に十分な対応策を示せるかが焦点となるが、長崎側出席者が早速「開門反対」を表明するなど、先行きは不透明だ。
「歴史があり、それぞれの思いもあるが、白紙で考えたい」。座長の郡司彰農林水産副大臣は会合の冒頭、こう語り、「結論ありきではない」との姿勢を強調した。
しかし、政権交代の成果をアピールする意味からも、政府・与党内には「佐賀側の開門要請を拒み続けてきた前政権の路線を踏襲していいのか」(政府関係者)との声が強く、開門に向けてかじを切ったようにも映る。「長崎県は開門反対でも、県民には容認派も少なくない」との指摘もある。開門に踏み切って政治主導の実績を示せれば、夏の参院選に有利に働くとの思惑もにじむ。
初会合は、農水省担当者が干拓事業について説明するだけに終わったが、開門に傾きつつある空気を察知してか、長崎側メンバーの西岡武夫参院議員は終了後、記者団に「(会合で)そもそもなぜこういう計画がスタートしたのかきちんと(議論)しないと、と申し上げた。私は(開門)反対だ」と語り、不快感をあらわにした。
佐賀側の川崎稔参院議員は「諫干問題を前進させるとの思いはすべての委員が同じだ」と言うが、当初は「1―2カ月で結論」としていた赤松広隆農相は9日の記者会見で「数カ月」と軌道修正。検討委内での合意形成の難しさをうかがわせた。
次のステップが、有明海沿岸の福岡、佐賀、長崎、熊本各県の合意取り付け。検討委は23日までに佐賀、長崎両県知事からそれぞれ意見を聞く予定だ。
長崎側は、開門によって干拓地で塩害が発生し、高潮などに対する防災機能も低下すると懸念。佐賀側は、現状通りでは漁業不振が続くと主張する。検討委では、こうした環境変化や住民の不安などへの対応策に時間を取られそうだ。
また、農漁業への被害が出た場合には、補償問題が発生しかねない。農水省は2003年、排水門を最初から全開にした場合の堤防補強や排水ポンプ設置などで631億円必要との試算を示している。開門方法によって経費抑制は可能との意見もあるが、財源問題は重くのしかかる。
赤松農相は、5年間の常時開門を命じた佐賀地裁判決(08年6月)に控訴した農水省の対応についても「そういうこと(控訴取り下げ)も含めて検討委で検討してもらう」意向だ。



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