東京で働く3人が長崎・五島に図書館を開設
「ななめの学校」第1回開く 「島の発想、知恵生かして」

 東京と地方を結ぶ新たな創業のあり方を考える異業種交流イベント「ダイアゴナルラーン ななめの学校」が〝開校〟した。会場は、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)が今年4月、東京都中央区八重洲に開設した「ダイアゴナル・ラン・トウキョウ(DRT)」。10月25日の第1回は、東京を拠点にしながら長崎県五島市富江町に私設図書館「さんごさん」を開いたコピーライターの鳥巣智行さんら3人が登壇。2年間かけ、地元の文化や知恵を生かしながら作り上げた過程を紹介した。

講演者3人の写真
右から中村直史氏、能作淳平氏、大来優氏、鳥巣智行氏

 東京の広告会社で働く鳥巣さんは、妻でアートディレクターの大来優さんとともに、福江島南部の漁村、富江町にある築80年の古民家を改装。昨年8月、私設図書館「さんごさん」を開いた。「五島は魅力にあふれる島。魚はおいしいし、隠れキリシタンがいた歴史もある」と鳥巣さん。友人を連れて何度も行くうちに「島に皆で集まる場所があれば」と思い立った。

 「図書館」にする発想は、島の住民からのアイデアだった。酒を飲みながら話し合う中で「大きい書店がない」「雨の日に観光客が過ごす場所がない」「子どもたちが集まる場所がほしい」という声が上がり、方向が決まったという。

さんごさんの外観写真
長崎県五島市にある私設図書館「さんごさん」=鳥巣智行氏提供

 設計したのは、建築家の能作淳平さん。ポイントは「島のモノ」と「島のつくり方」を観察して、かけあわせることだった。例えばキッチンの流し台に使う人造大理石は、通常はセメントに石を混ぜて研磨するが、五島はかつてサンゴ漁が盛んだった土地。現地のサンゴ加工店からサンゴの端材を分けてもらい、石の代わりにサンゴを使って「かわいらしい、世界で一つのキッチンができた」。現地の溶岩や、五島の住宅で使われる赤色の塗装なども図書館に活用した。

講演する3人の写真
和やかな雰囲気で展開されたクロストーク

 この日、議事進行したクリエーティブディレクターの中村直史さんは、五島市出身。「島の人たちの中にうまく入っていけたのか」という質問に、能作さんは「事務所スタッフには現地に住んでもらい、現場では看板を出して、ブログで情報発信もした。開かれた現場にしたかった」と説明。住民とのコミュニケーションが深まったという。

 図書館に置く本は「人生ベスト3」の本を募集し、島の内外問わず寄贈してもらった。大来さんは「せっかくなら大切な本のほうがいい。推薦の文章も添えてもらい、いろんな人の人生が垣間見える本棚になった」と言う。

人生ベスト3の本の写真

 「さんごさん」は本を読む場所としてだけでなく、住民の活動拠点になった。中村さんらは「五島こども大学」というワークショップを企画。子どもたちが建築を学んだり、島の産業を知るために実際に魚を釣り、すり身にして、揚げて食べる、という体験教室も開いたりした。観光客の目的地にもなり、「外の血が入ることでコミュニティーが動き出した」(中村さん)。

 隣にはコーヒー店も開設。鳥巣さんらは東京で「さんごさん」での取り組みを紹介しており、著名な建築家が訪れることもあるという。新しいデザインのサンゴアクセサリーづくりを進めており、島のカマボコ工場だった場所の活用策も検討している。「今後もいろんな地域、組織、地域の人々と『ななめ』な関係をつくっていきたい」と鳥巣さんは講演を締めくくった。

会場の聴衆写真
ダイアゴナル・ラン・トウキョウの会場には約120人の参加者が訪れた

 ダイアゴナル・ラン・トウキョウは、FFGが2017年4月に開設したオープンイノベーション拠点。地域と東京の企業をつなぐ拠点として開設し、35社・団体(10月18日時点)が施設運営のパートナーとなっている。「ななめの学校」は西日本新聞社共催で、月1回開催の予定。

会場の聴衆写真
福岡銀行東京支店と同じビルにある「ダイアゴナル・ラン・トウキョウ」