西日本新聞140周年記念プロジェクト「九州サイコー!会議」キックオフイベント

オープンデータ活用でサイコー!な九州へ

 誰でも自由に利用できる情報「オープンデータ」の活用で課題の抽出や見える化などを推進する「九州サイコー!会議」(西日本新聞社主催)のキックオフイベントが4月16日、エルガーラホール(福岡市中央区天神)で開かれた。行政や民間企業、一般市民などを結び付けながら地域課題の解決につなげていくのが目的。有識者の講演やトークセッション、事例発表が行われ、約100人の参加者は熱心に耳を傾けていた。

講演

濃密なオープンデータ環境が九州の未来をひらく

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授 庄司 昌彦

トークセッション風景
庄司 昌彦氏

 オープンデータ(以下OD)とは、インターネットを通じて誰でも入手でき、自由に編集・加工・共有できるさまざまな情報のことです。政府や自治体、企業、研究機関が公開する統計データをメインに、画像や動画などさまざまな資料が含まれます。ODは単に提示するのでなく、誰もがいろんな用途に使える「開放資料」と考えると分かりやすいでしょう。もちろん機密情報や個人情報は対象外です。

 人口減や税収の減少など社会の縮小化が進む中、これからの地域や社会の在り方を、枯渇することのない資源である情報とオープン化の力を組み合わせて考えることは得策でしょう。政府は2012年度からOD戦略を開始し、基本的な制度やツールを整備してきました。政府の全省のデータもオープン化され、政府全体のデータが検索可能なサイトもできるなど成果が上がっています。

 これからの大きな課題は、官民が協働してODの利活用を推進し、ビジネスと社会課題の解決を推し進め、そして、みんなが使いたいと思っているデータをもっとオープンにしていくこと。使えるデータが多いほど、その組み合わせも広がっていくという濃密なOD環境にすることが鍵になってきます。

 例えば、国内外の地域の不動産価値を推計する、これから犯罪が起こる場所を予測するなど、多くのデータが使える状態になっていたから生まれた精度の高いサービスは枚挙にいとまがありません。総務省が行った「情報通信技術(ICT)地域活性化大賞2016」では、熊本県の事例が大賞、福岡市が奨励賞を受賞するなど、九州にも優れた取り組みがあります。九州には地元愛に満ちた元気な地域密着企業が多いという特長が挙げられます。

 九州サイコー!会議を通して地域住民やメディアなどがうまく連携しながら、九州がより濃密なOD環境になり、データの利活用が活発な地域になっていくことを期待しています。

  • 講演風景
  • 講演風景
  • 講演風景
  • 講演風景
トークセッション

便利で豊かな社会の実現へ

■マインドを変える

写真/村上和彰氏
村上 和彰氏

 村上 庄司さんはオープンデータ(以下OD)の啓発活動で活躍し、加藤さんは3月まで福岡市でOD戦略の推進に尽力、井上さんはデータに基づき記事を書いています。それぞれの立場からODの現況について所感などをお聞かせください。

 庄司 日本は世界的に見てデータの提供が特に進んでいるというわけではないのですが、その活用は国際的に見ても盛んといえます。地域の課題解決などで市民エンジニアの活動が活発という特長があり、九州も例外ではありません。

 加藤 福岡市が全国的にもいち早くODに取り組んだ大きな狙いは創業支援です。そのために企業ニーズに合った行政データを優先的に出していこうという考えがあり、情報公開請求が多い営業許可などに関する情報について、昨年から提供を始めています。

 井上 確かに福岡市はとてもODが進んでいますね。それをメディア側が受け手として、まだ十分生かしきれていないというのが課題です。一方、自治体の担当者によっては情報を開放するというマインドが浸透していないとも感じます。

写真/加藤陽介氏
加藤 陽介氏

 庄司 国のルールではデータがどう使われようと、公開した側は責任を負わないとなっています。それでも何かあったら批判される向きもあるので、公開する側はやっぱり心配になります。われわれが行政に多くを求め過ぎずに、データを共有する仲間という感覚を持つことも大事なのではないでしょうか。

 加藤 誰がどう使い、どんなメリットがあるかも分からない中で、役所では手間もコストもかかるデータの公開をしていいのか、踏ん切りがつかない面もあります。市民や企業の利用が進むと行政側のマインドも変わってくるでしょう。

 井上 データを使えばこんなことができるという事例が、特に健康や子育てなど、より日常に密着した分野で増えていくといいのではないでしょうか。

■活用で地域が変わる

写真/井上直樹記者
井上 直樹記者

 村上 ODに積極的に取り組むことで地域はどう変わっていくと考えますか。

 庄司 福島県会津若松市では、産学が連携し、市のデータを使って除雪車の走行状況を地図上で確認できるアプリを開発しました。神戸市は姉妹都市のスペイン・バルセロナとODの人材育成で交流を重ねています。ODにより新しいチャレンジや関係などが次々と生まれていくはずです。

 加藤 行政内部のことでいえば、ODが出てきたことで、データを使いきちんと分析することを業務に生かすという、これまでになかった発想が育まれてきたと感じています。これは長い目で見ると大きな変革につながっていく気がします。

 井上 政府の地域経済分析システム(RESAS)データでは羽田空港や成田空港から入国した外国人のうち福岡に来るのは1%以下です。どうやって東京から九州にもっと外国人を呼び込むかという課題が見えます。データが地域の課題を発見するきっかけとなり、それを解決していくことは大きいでしょう。

 村上 ODは公開して終わりではなく、その後いかに活用するかが重要です。九州での利活用を加速するために、どんなことが大切でしょうか。

 庄司 福岡ではODによる利活用の大ヒット作はまだ生まれていませんが、飛躍する素地は整ってきたと感じます。互いに意見を言い合う、起業する、チャレンジする、などいろんな積極的な行動を生み出していくことが肝心です。それを福岡に限らず九州全体に広げていってほしいですね。

 加藤 九州全体ではあまりオープン化されていないからこそ、足並みをそろえて一気に進められる可能性も高いでしょう。福岡市が持つ今まで積み重ねてきたノウハウや自治体が相乗りできるデータサイトなども提供できますし、オープン化を加速するための仕組みはあります。

 井上 企業の持つ公共性の高いデータのさらなる公開もポイントです。自分の仕事では、スポーツやイベントなど日々、会社に集まってくる公開データを少しでも分かりやすい形で記事に反映していければと思っています。

 村上 BODIK(ビッグデータ&オープンデータ・イニシアティブ九州)での活動などを通じ、データはより良い地域社会をつくっていくための道具だとみんなが認識し始めていると感じています。市民レベルでODを使ってより便利で豊かな生活を実現していけることにも大きな価値があります。行政や企業、住民、みんなが連携して九州での利活用を進め、サイコー!な九州にしていきたいものです。

トークセッション出席者

村上 和彰氏
進行役 ビッグデータ&オープンデータ・イニシアティブ九州(BODIK)会長
庄司 昌彦氏
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授、九州サイコー!会議監修
加藤 陽介氏
前福岡市総務企画局 ICT戦略室 ICT戦略課長(現総務省 情報流通行政局 地方情報化推進室課長補佐)
井上 直樹記者
西日本新聞社 編集局経済部 記者
  • トークセッション風景
  • トークセッション風景
  • トークセッション風景
  • トークセッション風景

実践事例発表

「唐人町商店街の活性化案」中村学園大学ゼミが策定

 中村学園大学流通科学部の浅岡柚美ゼミでは、福岡市が公開している「福岡市経済の概況」「商店街実態調査報告」「商圏分析レポート」の3項目を主に利用して「唐人町商店街(福岡市中央区)の活性化案」を策定した。
 統計データを参考に、唐人町商店街振興組合の役員や買い物客を対象としたインタビューを行ったり、福岡地域戦略推進協議会が主催するワークショップに参加して定性データも集めたりして、アイデアを膨らませていった。
 昨年12月、日常的な買い物客、福岡ソフトバンクホークスファン、外国人観光客がターゲットのさまざまな活性化案を同振興組合に提案。ホークスのオープン戦があった3月25日には、飲食ができるファンの交流スペースを商店街に設置、交通系ICカードを使いファンを商店街に誘導して、くじ引きなどを行う実証実験をした。活性化プロジェクトは引き続き実施する。

福岡市・唐人町商店街活性化案を発表する中村学園大学の学生の写真
福岡市・唐人町商店街活性化案を発表する中村学園大学の学生

「鳥獣被害対策プロジェクト」開始福岡県は全国2位の被害額

鳥獣被害戯画サイト

 福岡県の鳥獣被害額が北海道に次ぎ全国第2位という事実を踏まえ、「九州サイコー!会議」は、「鳥獣被害対策プロジェクト」を始めた。鳥獣被害の背景には自然環境の破壊などもあることから、人間も動物も住みやすい九州にという視点で取り組む。
 まず鳥獣被害状況の周知が第一と捉え、各自治体のデータ提供により同県内の被害状況を見える化するウェブサイト「鳥獣被害戯画」の作成に着手、4月にオープンした「鳥獣被害戯画サイト」http://www.choju-giga.com/

  • 総務省
  • BODIK