オープンデータが、まちを、九州を、ぐんぐん変えていく

 「九州をもっともっとサイコーな場所にしたい!」。そんな思いを込めて「九州サイコー!会議」(西日本新聞社主催)がスタートしました。行政や企業などが持つデータを誰でも使えるようにオープンにし、それを活用していくことで九州の課題解決を目指します。
第1弾は、福岡県が抱える鳥獣被害。オープンデータの専門チームや猟師、ジビエ料理店などがタッグを組んで動きだしています。
さまざまな動きや情報がつながって、これからぐんぐん「九州サイコー!」になる。開かれた未来がそこにあります。

オープンデータの利活用でより豊かな社会に

―BODIKの設立趣旨や現在の主な活動をお聞かせください。

 世界的な潮流であるビッグデータとオープンデータ(以下OD)の取り組みを推進し、地域経済の活性化に貢献することを目的に設立されました。データ分析における人材育成を活動の柱に、研究会開催や情報提供、オープンデータ化促進、人的ネットワークの構築などを行っています。
九州・山口地域の地方自治体がODを公開するためのデータカタログサイトを無償で提供するクラウドサービス「BODIK ODCS」も立ち上げました。現在、3自治体が利用し、10以上の市町村が採用を検討しています。

―さまざまな面で「九州サイコー!会議」に協力されています。期待することは。

 自治体が持つデータは、元をたどれば税金によって生成されたもの。つまり市民みんなのもの、「社会資源」です。そのデータがオープンになれば、例えば腕に覚えのある一般の市民がそれを使い、スマートフォンのアプリを作って公開できるなど、私たちの暮らしが便利で豊かになることにつながります。そのようなことをまず「九州サイコー!会議」を通じて多くの人に知っていただけたらうれしいですね。
鳥獣被害対策のワークショップも進んでいますが、これからの社会は課題に対していろんなデータをテーブルに出し、みんなでアイデアを出し合って解決していくというマインドセット(思考形成)が大切です。単に行政任せにするのではなく、地域の課題は地域で解決していくという流れがこの会議で生まれればと期待しています。

―地方創生や官民協働社会に向けてODが果たす役割とは何でしょうか。

 地方創生は、基本的に住民自身がどういうまちづくりをしたいかを考えるのが重要で、そのための材料としてデータは欠かせません。ビジネス面では、地方には中小企業が多いので、地域の枠にとらわれずに連携し、それぞれの強みを生かしながら、大企業に負けない一つの大きなビジネスを創造していく「協働型経済」が鍵です。その実現にはそれぞれの資源の共有が必須であり、その根幹となるのがデータです。官民挙げてOD化を進め、データを共有する輪を広げていくことが地方の明日を開いていくと考えます。

―九州・福岡におけるOD利活用推進の課題、その対策をどう捉えていますか。

 福岡市などOD化に積極的な自治体もありますが、九州全体を見ると、データをオープンにしている市町村は少ない状況です。このため利活用も低調になっています。データをビジネスに生かすとなると、対象となる市場全体の自治体のデータが必要になるからです。
BODIKでは九州内の市町村の100%OD化を目標にしています。そのためにも冒頭で触れた「BODIK ODCS」をより多くの自治体に活用してもらえるように、さらに働き掛けていきます。

―今後の展望や目標を。

 データの共有が当たり前の社会になればビジネスが生まれ、雇用も生まれ、地方創生につながります。またデータを共有することによって行政サービスのコストを削減できる例もあります。データの利活用で地方の魅力を高めていけることを、全国の先頭を切って九州・福岡で実証していき、未来への希望につなげていきたいと思っています。

BODIK(ビッグデータ&オープンデータ・イニシアティブ九州)
会長 村上 和彰
公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)副所長、九州大学名誉教授、株式会社あしたのまなびLab代表取締役、株式会社チームAIBOD創業者&技術顧問

BODIK:福岡市、福岡アジア都市研究所(U R C)と九州先端科学技術研究所(ISIT)により2013年に設立されたビッグデータとオープンデータに関する研究・利活用促進機関。14年からオープンデータに軸足を置く

オープンデータとは?

 公共機関や企業などが保有するデータを、誰もが編集・加工などがしやすい形でインターネット上に公開したもの。多様なデータを組み合わせることで新サービス・新ビジネス創出の可能性を引き出します。もともとは「もっと行政機関の持つデータの有効活用を」という視点から生まれました。福岡市は自治体の中でもオープンデータの取り組みを積極的に展開しています。

イメージ
九州サイコー!会議

第1回 「鳥獣被害対策会議」開催

2月15日に西日本新聞社会議室で

 村上和彰会長をはじめとするBODIK所員、福岡県内の各自治体の担当者、福岡県猟友会会員、ジビエ(野生の鳥獣の肉)を提供する飲食店経営者など多彩なメンバーが参加。各自治体から鳥獣被害の実態や対応策などが紹介され、大きく「侵入防止策」「捕獲」「獣肉の有効利用」に関するあらゆる課題が明らかになりました。次回は3月24日(金)に実施予定です。

ヒントや発見がいっぱい「ふくおかloT祭り in SRP」

2月24日、福岡市早良区の福岡ソフトリサーチパークで、「ふくおかIoT祭り in SRP」(主催:BODIK、福岡市IoTコンソーシアムなど)が開催されました。
loTにおける多彩なプログラムが実施され、オープンデータ関連の講演も行われました。

loT:「Internet of Things」の略。パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器に限らず、全ての“モノ”がインターネットにつながることで、生活やビジネスが根底から変わるという意味合い。

第1部基調講演

「オープンデータ2.0」と九州での展開への期待

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授・主任研究員
一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表理事
内閣官房IT総合戦略室 オープンデータ伝道師
庄司 昌彦

データ活用先進事例 九州から次々と

 地域の資源をどう生かして社会を動かすかを考えたとき、「情報+オープン化の力」がキーポイントになります。大切なのは、オープン化されるデータは誰もが自由に使用・編集・共有できる「開放資料」であることです。オープンデータが活用されると日本では年間1800億~3500億円の経済効果があるとされています。

 政府は2012年度から「電子行政オープンデータ戦略」を策定し、基本的な制度やツールを整備してきました。現在は官民のデータを組み合わせて活用し、ビジネスと社会課題解決を一緒に行い成果を上げていく「オープンデータ2.0」の段階に入っています。

 取り組みに実効性を持たせるには、オープンな都市データの「濃度」(質と量の充実)を上げ、データの可視化だけでなく、誰もがより自由に編集加工できるようにしていく必要があるでしょう。それはまさに社会資源としてデータが使える状態であり、そこから新しいビジネスや課題解決が生まれ、まちの魅力や競争力の向上につながります。

 都市データの濃度を上げていく中で、モノの稼働率を上げ、より多様なニーズに応えていくシェアリングエコノミーも、地方創生の一つの方向性といえます。

 例えばインターネットを介してトラックの稼働状況を把握してオープンにし、空車のトラックとそれを利用したい人をマッチングしていく。一般車両をタクシーとして使い方を広げるといったような、先進的なシェアリングサービスを推し進める都市が世界で多く生まれています。

 そして今、地方経済の担い手として特に注目したいのが地域に根差した“地方豪族”企業です。その特徴は、飲食や観光、交通など生活に密着した事業を主体に積極的に異分野へも進出し多角化を推進。その一方で利益が出ない業種は迅速に方向転換する軽やかさも有していることです。

 九州には、宮崎市の日米商会など、分野拡大型地方豪族企業が多い。データ活用はこれから生活のあらゆる分野に入っていくので、地元密着でビジネスを展開してきた地方豪族企業は有力なパートナーになるのではないでしょうか。官民のビッグデータ・オープンデータを自分たちで組み合わせて活用していく先進事例を、ぜひ九州から次々と生み出してください。

第2部講演①

スマートシティーを加速するオープンデータプラットフォーム

BODIK副会長 東 富彦

オープンデータが都市の評価に

 世界的に人口が増加し、ますます都市に人が集中すると予想される中、スマートシティー(以下SC)の取り組みは重要課題です。スペイン・バルセロナにある国際的に評価が高いビジネススクールが2014年から実施しているSCのランキング「CIMI2016」では、ニューヨーク市(以下NYC)が1位でした。

 CIMI2016の評価指標は「経済」「公共経営」「ガバナンス」など10分野にわたる合計66項目。同2015では、ガバナンスの評価指標に「イノベーション部門の機能数」と「行政ウェブサービスの範囲」が、同2016はオープンデータを活用するシステムを保有しているかの「オープンデータプラットフォーム」が追加されています。

 CIMI2016の総合順位上位50都市を分析した結果、データ活用やイノベーションに積極的なグループがあり、NYCを含む北米の都市が大半を占めていることが判明。さらにNYCが同2016で1位に輝いた大きな要因である「経済」の強さに対し、オープンデータプラットフォームの要素が貢献した可能性があると分かりました。

 ニューヨーク大学の研究機関が米国におけるオープンデータ利用企業を調査した「Open Data 500」のランキングに登場する企業の所在都市を集計すると、トップ5の都市がCIMI2016のデータ活用やイノベーションに積極的なグループの上位5都市と同じ顔触れでした。

 1位のNYCは11年、2位のサンフランシスコは09年にオープンデータ化を遂げています。企業や市民がデータを活用し、経済の活性化やスマートシティー化を実現している可能性も考えられます。

スマートシティー:IoTの先端技術を用いインフラサービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら人々の生活の質を高め経済発展を目指す都市。