社会人の頭髪検査!? 茶髪「色見本」導入続々 就職活動・明るすぎは「アウト」 企業や役所・「ふさわしさ」数値化

中村学園大短期大学部などで導入が広がる髪の色見本「レベルスケール」
中村学園大短期大学部などで導入が広がる髪の色見本「レベルスケール」
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 その髪色はアウト?セーフ?髪を茶色に染めた日本人を見ても珍しくない時代。若者を中心に日常的なファッションとしてすっかり定着したヘアカラーを職場が、どこまで認めるのか。企業の社員教育、学校の就職活動の現場で、ヘアカラーの明るさや色合いを一目で確認できる「レベルスケール」(色見本)を導入する動きが広がっている。

 8日午後、福岡市城南区の中村学園大短期大学部の一室。「よかったー」。病院給食の調理実習を控えた食物栄養学科2年の藤田結衣さん(19)が安堵(あんど)の表情を浮かべた。「まあ、これなら大丈夫かな」。同学科の内田和宏准教授(42)もうなずいた。

 今や就活は茶髪を黒く染め直すことから始まる。「奇抜な茶髪は社会人としてアウトでしょ。でも、真っ黒の髪はべたーっとして逆に不自然。暗めの茶色が地毛なんで、ある程度のヘアカラーを認めてくれると助かります」。就活に向けた“髪色検査”をパスした藤田さんは、足取りも軽く部屋を出て行った。

 内田准教授は4年ほど前から、就活指導の一環として、13段階の色合いが分かる地場かつらメーカーの「レベルスケール」を使っている。「職場でヘアカラーがある程度認められてきたのを感じていた。でも、どの程度なら許されるのか困っていたので、実際に色合いを見ながら指導できるので助かっています」

 内田准教授は就職先の企業や病院からヒアリングし、落ち着いた色の「6番以下」にするよう学生を指導している。

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 もともとレベルスケールは、美容師らでつくるNPO法人日本ヘアカラー協会(東京、JHCA)が髪染めの勉強用として2000年に考案した。合成繊維でできた髪の房が、最も黒に近い5番から明るい15番まで、11段階に染め分けられている。

 しかし、03年ごろから「職場にふさわしい髪はどんな色?」「茶髪の社員が増えたのでヘアカラーの基準を設定したい」といった相談を受けるようになった。JHCA基準のレベルスケールとして有料で売り出したところ、日本航空が「社員の髪の明るさを測るのにちょうど良いツール」と初めて購入。ホテルオークラ、KDDI、三菱東京UFJ銀行…。大手企業が次々と採用し、今年4月時点で約17万個を販売した。

 JHCAの佐藤肇委員長は「茶髪という言葉は既に死語。美しいヘアカラーは職場を美しくするという考え方が職場に浸透している」と話す。

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 福岡県内では企業だけでなく、役所や病院にも導入が進んでいる。

 社員の8割が女性という免税店JTCの福岡本社人事部(福岡市)は「真っ黒に染め直すよう指導すれば、反発が強くて入社もしてくれない。接客に支障がない程度の茶髪は、認めないとやっていけない時代」と打ち明ける。

 宗像市役所は昨年4月に接遇マニュアルを策定した際、認めるヘアカラーを一番暗い3番から明るい15番まであるスケールで「7番以下まで可」と定めた。

 職員約750人のうち約300人が非正規で、髪の色や服装がばらばらだったこともあり、人事課は「市民の皆さんにとって正規、非正規は分からない。公務員としてふさわしい身だしなみを指導する基準がほしかった」と説明する。

 約10年前から看護師らの指導に活用している北九州市の芳野病院も「髪を染めることは個人の表現の自由だが、患者さんはお年寄りが多い。折り合いをつける判断基準は必要」としている。

 ●単なる規制を超えて

 ▼西南学院大の宮原哲教授(コミュニケーション学)の話 茶髪にすることが、他人との違いをことさら強調する「協調性のなさ」や「非行の前兆」から、「普通のこと」として市民権を得た表れだと思う。ただ、職場や学校がレベルスケールを導入して「ここまで許せる」などと規制するのではなく、髪の色をあれこれ変えてみて本当に自分が気持ちよいと思える色を見つけたり、髪の色など気にしないで仕事や勉強に専念できたりする社会になるのが本当だろう。

この記事は2015年04月14日付で、内容は当時のものです。

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