いまどきの学校<4>動物の世話 「小さな命」が児童育む

アイガモの元気丸に餌をやる新入小飼育委員会の児童
アイガモの元気丸に餌をやる新入小飼育委員会の児童
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 福岡県直方市立新入小には、全校児童に愛される“小さな友達”がいる。オスのアイガモ「元気丸」だ。2時間目終了後の中休みと昼休みの毎日2回、飼育委員会の5、6年生が中庭の飼育小屋に足を運ぶ。餌や水の量を確認した後は、小屋の外を一緒に散歩することもある。

 新入小でアイガモを飼うようになったのは約20年前から。アイガモを田んぼに放して雑草や害虫駆除に活用するアイガモ農家との交流がきっかけだった。毎年5年生がアイガモ農法を体験しており、業者から仕入れた幼鳥を初めて農家の小屋に入れる「放鳥」では、ひなを1羽1羽優しく扱うことを学ぶ。

 元気丸は5年ほど前、メスの「愛ちゃん」と一緒に学校にやってきた。その愛ちゃんに異変が起きたのは5月。飼育委員の6年冨松輝君(12)が散歩させようとしてもうずくまったままだった。「いつもと違って足を伸ばして苦しそうだった」。急いで大村美奈子校長(57)に報告したが、その日のうちに死んでしまった。

 「動物は言葉を話すことができない分、世話を続けると相手の立場で考えるようになる。愛ちゃんは死んだが、命とはどういうものか伝わったはず」と大村校長。飼育を通じた教育的効果を実感する。

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 命の大切さを学ぶ機会となる動物飼育。学習指導要領でも「動物や植物へのかかわり方が深まるような継続的な飼育、栽培を行う」ことが求められている。

 ただ、県教育委員会によると、政令市を除く県内の小学校でウサギやハムスターなどの小動物(鳥類をのぞく)を飼っている割合は13年度、29・6%にとどまる。09年度の46・7%から大幅に減った。筑豊の5市では本年度、ニワトリなども含めた小動物を飼育する小学校は59校中11校(18・6%)しかない。

 背景にあるのが鳥インフルエンザの発生や動物アレルギーを持つ児童の増加という。嘉麻市は全8小学校のどこも飼育はしておらず、市教委担当者は「動物とのふれあいは1年生の生活科の目当てでもあり、何らかの対応が必要。身近にいない場合、民間業者などに協力してもらい授業に組み込んでいる」と話す。

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 こうした小学校のニーズに着目するのが、県立嘉穂総合高(桂川町)の地球環境システム科だ。

 同科は旧嘉穂中央高から農業系コースを引き継ぎ、畜産動物のほかダチョウやポニーなど計9種類の動物を飼う。担当の大石義昭教諭(59)によると、今年は10月に桂川東小と稲築西小の1年生計106人がそれぞれ動物見学に訪れ、初めて見るダチョウの大きさやかわいらしいモルモットに歓声を上げたという。

 対応したのは同科動物専攻の3年生。餌の種類や与え方、モルモットの指は前足4本と後ろ足3本で数が異なることなどを丁寧に教えた。

 「児童に説明することで生徒の理解も深まる」と大石教諭。動物や農業に対する児童の関心を育むと同時に、高校生の成長につながらないかと期待する。

この記事は2015年12月08日付で、内容は当時のものです。

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