慰安婦「解決」 一進一退 日韓合意あす1年 財団支援金 7割受け入れ 少女像 釜山に新設の動き

 【ソウル曽山茂志】旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡る日韓合意から28日で1年。韓国の「和解・癒やし財団」は合意時点で生存していた元慰安婦46人のうち34人が支援金を受け取る意思を示したことを公表し、日本政府も「粛々と進んでいる」(外交筋)と一定の評価をしている。だが、合意を決めた朴槿恵(パククネ)大統領は親友の国政介入疑惑で職務停止。在釜山日本総領事館前に新たな少女像を建設する計画も浮上し、両国が確認した「不可逆的な解決」の行方はなお不透明だ。

 「24年間にわたる難題について、あの時点で両国が歩み寄った最善の結果だった」。22日の国会で尹炳世(ユンビョンセ)外相は、元慰安婦の女性が初めて公式に名乗り出た1991年以来続いた日韓の懸案の解決にこぎ着けた意義を強調した。

 朴氏の職務停止によって国政の主導権を握る野党勢力は、慰安婦問題を巡る日韓合意の再交渉を求めている。最大野党「共に民主党」の前代表で次期大統領選の有力候補の一人、文在寅(ムンジェイン)氏は今月15日、「日本の法的責任と公式謝罪を明確にすべきだ」と指摘し、合意を認めない姿勢を示した。

 尹外相は「(日本の)安倍政権の保守化という困難な状況にもかかわらず、過去の協議に比べても踏み込んだ合意内容だ」と指摘。「不満は分かるが、再協議はかなり困難だ」と述べ、野党勢力にくぎを刺した。

 ■順調アピール

 韓国では、朴氏が推進した政策全てを否定するムードが拡大。朴氏退陣を訴える大規模デモには「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協)」も参加して、国民に合意破棄を訴えた。

 こうした雰囲気を警戒する韓国政府は、支援事業の進み具合をアピールする戦略に出ている。

 「和解・癒やし財団」が23日、初めてマスコミ向けに発表文を出したのもその一環だ。合意時点の存命者の7割以上に当たる34人が支援金を受け取る意思を表明。挺対協と行動を共にする「ナヌムの家」の支援を受ける元慰安婦が5人含まれることも明らかにした。理事の一人は、西日本新聞に「予想以上に順調だ」と話した。

 慰安婦問題を所管する姜〓(〓は「おうへん」に「恩」)姫(カンウンヒ)女性家族相は26日、聯合ニュースの取材に元慰安婦の追悼事業の具体的な検討に入ったことを明らかにした。支援金を拒む元慰安婦についても「門前払いされても、粘り強く交渉する」と決意を示した。

 ■撤去に及び腰

 支給が続く支援金と対照的に、ソウルの日本大使館前の少女像撤去問題は、全く見通しが立っていない。設置した挺対協は聞く耳を持たず、韓国外務省も「少女像は民間の問題」と及び腰。韓国メディアでは「日本大使館が別の場所に移った方が早い」との声さえ出ている。

 新たな火種もある。釜山の市民団体は、在釜山日本総領事館前に慰安婦問題を象徴する少女像を31日に設置すると発表した。地元区は許可しない方針で、日本政府も「あらゆるチャンネルを通して設置回避を働き掛けている」(外交筋)が、ソウルの少女像と同様に市民団体が設置を強行する可能性がある。

 年明けには合意時点で死去していた元慰安婦199人の遺族らにも現金支給が始まる予定。ただ、来年は次期大統領選もあり、国民に不信感が根強い慰安婦問題に政府が関与しにくくなるとみられ、「敏感な少女像問題は当面棚上げになる」との観測も出ている。

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 ●ワードBOX=従軍慰安婦に関する合意

 日韓両国が昨年12月28日、従軍慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した。日本政府が軍の関与と政府の責任を認め、韓国政府は、日本が撤去を求めるソウルの日本大使館前の少女像について「適切に解決されるよう努力する」とした。合意に基づき7月に韓国に「和解・癒やし財団」が発足。日本が拠出した10億円を原資に、合意時点で存命していた元慰安婦46人に1人当たり1億ウォン(約970万円)、死去していた199人の遺族らに同2000万ウォン(同194万円)の現金を支給する。

この記事は2016年12月27日付で、内容は当時のものです。

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