86歳 岩石山2万回制覇 添田町の川崎さん 36年欠かさず 「一日の健康もらえる」

2万回達成の記念看板と川崎エミ子さん=9日午後
2万回達成の記念看板と川崎エミ子さん=9日午後
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山頂近くにある岩場を歩く川崎さん=9日午後
山頂近くにある岩場を歩く川崎さん=9日午後
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 福岡県の添田町と赤村にまたがる標高454メートルの岩石山(がんじゃくさん)に2万回以上登った女性がいる。麓の添田町添田の川崎エミ子さん(86)。36年間、ほぼ毎日1、2回登り、「山の主」とも呼ばれる。山に取りつかれたという川崎さんは「今日も元気だ。ありがとう」と感謝を込めて山を歩く。

 桜島を望む鹿児島市で生まれた川崎さんが添田町に来たのは25歳の時。同郷で12年前に亡くなった政夫さん(享年80)が働く炭鉱街に嫁いだ。約50年前の閉山まで農業をしながら田川地区の炭鉱住宅で過ごした。

 閉山後、引っ越した家の近くに岩石山があった。

 平清盛が山頂近くに城を築き、佐々木小次郎の出生地とも伝わる岩石山。頂上付近には、平らで畳8畳分ある「八畳岩」や「梵字(ぼんじ)岩」など巨岩が点在する。頂上からは絶景で、英彦山や日本山岳遺産の嘉穂アルプス、周防灘、脊振山と四方に多くの山が見渡せる。

 「桜島に登っていた時から山が好きだったんだろうね」。50歳になった1981年から何げなく岩石山に登るようになり、いつしか日課となった。

 毎朝起床後、布団の上で腹筋と腕立て伏せを30回ずつ。体操をして午前7時ごろに家を出て約3時間かけて頂上を目指す。帰宅後、畑でホウレンソウや春菊などに手を加え、午後2時ごろから午前中とは違うルートで約2時間かけて再び登る。

 雨の日はやんだ時を見計い、雪の日は白い景色に胸を高鳴らせながら山を味わう。台風の日も登る。「木が風を遮るから山の中は安全」なのだと言う。

 山頂にある登山記帳に名前を記録し続け、昨年11月20日に通算2万回を達成。友人たちが頂上近くに記念の看板を立てた。3月中旬には2万360回を数えた。登山雑誌「季刊のぼろ」(西日本新聞社刊)編集チームの中村真悟さん(59)は、低山でも一つの山に2万回以上登った人は聞いたことがないという。

 かつて山火事があった影響で、登り始めた頃の岩石山には草木がほとんどなかった。今、登る道にはシダが生え、見上げるほど大きな木々に覆われる。山の隅々まで知り尽くし、強風や大雨の後は、役場から山に異変がないか尋ねられる。

 岩石山にとどまらず、北海道から沖縄まで日本全国の山を登り、2009年にはネパールに1カ月間滞在して、5千メートル級の山々を巡った。

 山に登り始めて風邪も含めて病気は何一つしていない。川崎さんは岩石山を「自分の病院」とも言う。「登山は自分の張り合い。一日の健康をもらって、今日も元気に登れたというのが一番うれしい」。玄関先から頂上で揺れる旗を見上げ、明日もまた山を目指す。そろそろ桜がいい頃だ。

この記事は2017年03月25日付で、内容は当時のものです。

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