炭鉱閉山から30年 軍艦島 観光客誘致なるか 保存へ機運高まる 課題は億単位の補修費用

日本近代化を支えた産業遺産として、観光活用や保存に向けた取り組みが進む長崎県高島町の端島
日本近代化を支えた産業遺産として、観光活用や保存に向けた取り組みが進む長崎県高島町の端島
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端島を目の前にして写真やビデオ撮影をする周遊ツアーの参加者。行政などの観光活用への期待は高い=2004年1月4日、長崎県高島町
端島を目の前にして写真やビデオ撮影をする周遊ツアーの参加者。行政などの観光活用への期待は高い=2004年1月4日、長崎県高島町
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【2004/01/15】 長崎県高島町端島(はしま)(通称・軍艦島)の海底炭鉱、三菱端島鉱が閉山して15日で丸30年を迎えた。島は閉山直後に無人化し、長年放置されてきたが、昨年、元住民らによる「軍艦島を世界遺産にする会」発足を契機に、日本の近代化を支えた産業遺産として価値が見直されつつある。全国的な知名度と人気を利用して観光客誘致につなげようと、行政も動き始めた。

◆関心高い市民

 「端島に対する市民の関心がこれほど高いとは思わなかった」
 特定非営利活動法人(NPO法人)軍艦島を世界遺産にする会の坂本道徳代表(49)=同県長与町=は驚きを隠さない。昨年11月に同会が募集した端島を遊覧船で周遊する有料ツアーに、50人の募集定員を大きく上回る140人の応募があったからだ。
 高校卒業まで端島で暮らした坂本さんは2001年秋、所有者の三菱マテリアル(東京)から高島町に島が無償譲渡されたのを機に島の保存・活用を求める活動を開始。昨年3月には、「日本初の高層鉄筋住宅が残るなど建築史的にも産業史的にも貴重な端島を保存する機運を盛り上げたい」と、会を結成した。
 同会は昨年、ツアーのほか、写真展やシンポジウムなどで保存の必要性を訴えてきた。会員は60人に膨らんだ。坂本さんは「価値が再認識され運動の輪が広がった」と手応えを感じている。

◆認知度上がる

 坂本さんの活動は、観光客誘致や地域活性化をもくろむ行政関係者らも動かし始めた。
 県や九州運輸局長崎運輸支局は昨年夏、公共交通機関を使って同市と端島、野母崎町を結ぶ観光ルートを構築するため、行政や交通事業者による検討委員会を発足させた。長崎市も来年1月に予定する高島、野母崎両町など6町との合併をにらみ、修学旅行誘致用のパンフレットを作製、端島の周遊見学をPRしている。
 行政が端島を観光客誘致の起爆剤として期待する背景には、会の活動がマスコミに大きく取り上げられ、端島の認知度が高まったことがある。
 長崎市観光振興課の西田憲司主幹は「修学旅行の誘致のため訪れた東京の旅行会社も、端島への反応は良かった」と言う。
 端島の観光活用の動きは商工会など民間にも広がった。昨年、町内に「軍艦島資料館」を開館した野母崎町商工会青年部の向井秀樹部長(33)は「箱ものはどの自治体でも造れるが、端島は世界に一つしかない」と、島を望む景観を生かした観光振興に期待する。

◆世界遺産も視野

 端島の活用には課題もある。坂本さんは「島の周囲の護岸や建物が崩れかけ、台風が直撃すると崩壊しかねない」と訴えており、崩壊をくい止めることが急務だ。
 島の保存・修復には億単位の費用がかかることが予想され、行政の支援が必要。島を所有する人口900人の高島町は自主財源に乏しいが、町を吸収合併する長崎市は「将来的には保存のための調査や、世界遺産登録に向けた国への働き掛けも検討したい」(黒岩秀文企画部主幹)と前向きに取り組む考えだ。
 長崎市と周辺には、日本初の近代炭鉱の高島炭鉱立て坑(北渓井坑)や日本初の洋式修船場・小菅修船場跡などが残る。
 端島だけでなくこうした産業遺産を活用する観光振興策や街づくりを求める声も出ている。世界遺産を決める「世界遺産委員会」のドイツ代表、ビジッタ・リングベック博士は昨年、長崎を訪れ、「日本近代化の基礎をつくった場所で非常に価値が高い。端島を核に長崎全体を日本近代産業発祥の地として申請してはどうか」と提案した。
 長崎の産業遺産の中で端島をどう位置づけ、活用するか。保存や世界遺産登録には多額の費用と国を動かす粘り強い交渉が必要だ。リングベック博士は「世界遺産登録には、産業遺産に対する地元の市民の誇りが最も重要」と話した。
 (長崎総局・野村創)

=2004/01/15付 西日本新聞=

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