【DCの街角から】親しまれ、頼られる「日本」

第2次大戦時に強制収容された日系人を象徴する鶴の像。今も移民への差別が深刻な米国で、差別と闘った歴史を持つ日系人が注目されている
第2次大戦時に強制収容された日系人を象徴する鶴の像。今も移民への差別が深刻な米国で、差別と闘った歴史を持つ日系人が注目されている
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 ワシントンのポトマック川沿いの桜並木が満開を迎えた。20世紀初めに日本から寄贈されたことは米国内でも広く知られ、多くの市民に親しまれている。

 桜と言えば、先日の米大手紙の地方版に、昼夜を問わず楽しむ日本の花見を紹介した上で「DCは日本に負けている」と指摘するコラムが載っていた。こちらでは飲酒しながらの花見は禁止されている。シートを敷いてゆったりめでる習慣も根付いておらず、昼間に散歩がてら、という人がほとんどだ。コラムは「もっと上手な楽しみ方があるはずだ」と提起していた。

 米国に住んで1年たつが「日本の文化を手本に」という趣旨の記事はあまり記憶になく、ちょっと誇らしい気分になった。

 ポトマック河畔から少し離れたユニオン駅近くにも桜が美しい場所がある。桜や石の壁に囲まれた小さな広場。そこに有刺鉄線が絡み付いて身動きの取れない鶴が壁の向こうを見渡そうと首を高く伸ばす像が立つ。

 像は国立日系米国人慰霊碑。「鶴は第2次大戦中、米国の政策によって強制収容された日系人の象徴。収容キャンプの外にある自由を求める心情を表現しているんです」。広場で出会った日系人が教えてくれた。

    ☆    ☆

 強制収容の根底には、米国の敵だった日本にルーツを持つ日系人への差別があったとされる。移民への差別は今も厳然と存在する。特にテロリストと同一視されることもあるイスラム系移民にとっては切実な問題だ。不用意に「差別を感じることがあるか」などと尋ねると、「あんた何も分かってないね」と不快げに返されるのがオチだ。

 先週末、この広場で強制収容の史実を伝えるイベントがあった。日系人とともに出席したアジア系の移民が「強制収容を経験した日系人は、差別に直面する私たちの支えとなる存在だ」と連帯を訴える声を上げると、日系人のデービッド・イノウエさん(46)が「他人への思いやりの心をなくす人が増えている今、差別と闘わなければならない」と宣言する一幕があった。

 歴史を知る日系人は高齢化が進む。「私の役割は『過ちを繰り返すな』と言い続けること」とイノウエさんは語った。彼らの存在が何とも頼もしい。

    ☆    ☆

 来週、安倍晋三首相がトランプ大統領と北朝鮮や通商問題を話し合うため米国を訪れる。

 安倍氏はトランプ氏に頼りにされ「日米同盟は最高の状態」とも言われる昨今、米国内には「暴走気味のトランプ氏を諭すくらいの姿勢で臨んでほしい」と期待を寄せる人がいる。日本にちなんだ良い話題が続く中、お決まりの「対米追従」ではなく、日本の存在感を示してほしいところだが-。 (田中伸幸)

=2018/04/14付 西日本新聞夕刊=

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