【DCの街角から】「世界の警察官」は当然か

アーリントン国立墓地で、親族らとともに伯父の墓に花を手向けたサンドラ・タナマチさん(左から3人目)
アーリントン国立墓地で、親族らとともに伯父の墓に花を手向けたサンドラ・タナマチさん(左から3人目)
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 12日の米朝首脳会談を終え、記者会見に応じたトランプ大統領は、普段は「フェイク(うそ)ニュース」と罵倒する「反トランプ」の記者からの質問も数多く受けるほど機嫌が良く、1時間以上にわたって会談の成果をアピールし続けた。

 その日、会見場にいた数百人の記者を最も驚かせた「成果」は米韓合同軍事演習の中止だっただろう。しかもトランプ氏は在韓米軍について「いずれは撤退したい。兵士を米国に帰国させたい」とも述べた。それは支持者向けの集会でも口にする彼の持論だ。その背景には、世界各地への派兵が常態化している米軍の現状に対して、米国民の間にくすぶる不満がある。

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 この会見から2週間ほど前、戦没将兵追悼の祝日(メモリアルデー)だった5月末の週末に、ワシントン郊外のアーリントン国立墓地を訪れた。戦地で命を落とした米兵が眠る墓に、親族らが花を手向ける日だ。

 第2次大戦中、日系人で編成された「442部隊」に所属し、欧州で戦死した伯父を持つサンドラ・タナマチさん(南部テキサス州在住)もその一人。父方の祖父が福岡県小郡市出身と聞き、話をうかがうと「伯父をはじめ米国に命をささげた方々のおかげで日々の自由を享受できるのです」と、米兵の存在を誇らしげに語ってくれた。

 そんな米国民が、在韓米軍撤退の可能性に触れたトランプ氏の発言をどう受け止めたか-。後日、タナマチさんに尋ねると「軍事演習の中止は同盟国との連携を考えれば間違いだと思う」との回答に併せて、こんな答えが返ってきた。「若い米兵を派遣して世界の救世主であろうとする状態をやめる必要がある、という意見は理解できる」

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 米国史上最長の戦争となったアフガン戦争は今なお終わりが見えず、他の地域でも米兵が危険にさらされる状況が続く。そんな中、「なぜ米国の若者が海外で犠牲になり続けなければならないのか」という厭戦(えんせん)ムードを感じることは多い。米国はよく「世界の警察官」に例えられるが、褒め言葉として口にしたつもりでも、取材先や知人から嫌な顔をされたことは一度や二度ではない。

 トランプ氏の発言は東アジアの安全保障を揺るがしかねないとして、日韓だけでなく米国内でも反対論が多い。「在韓米軍の縮小、撤退は当面なかろう」という見方が常識的ではある。

 だがトランプ氏は今後も持論を貫くだろうし、持論は在日米軍にまで及ぶかもしれない。一連の発言を「経費削減狙いで身勝手」と切り捨てるのは簡単だが、支持拡大をもくろむトランプ氏が国民の抱く不満を巧みに突こうとしている側面を忘れてはならない。 (田中伸幸)

=2018/06/23付 西日本新聞夕刊=

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