【DCの街角から】「あなた、フェイクなの?」

ウェーブも沸き起こったトランプ大統領の遊説会場。トランプ氏が姿をみせると支持者は総立ちに=2日、ペンシルベニア州ウィルクスバリ
ウェーブも沸き起こったトランプ大統領の遊説会場。トランプ氏が姿をみせると支持者は総立ちに=2日、ペンシルベニア州ウィルクスバリ
写真を見る

 トランプ米大統領の地方集会を1年ぶりにのぞこうと今月初め、東部ペンシルベニア州の遊説先に車を走らせた。開始の2時間前には到着したが、会場の外は既に支持者たちの長蛇の列。入場を待つ間、大統領専用機「エアフォースワン」が上空を通過するだけで大歓声が上がるほどの盛り上がりだった。

 そんな熱烈な支持者にトランプ氏の評価を尋ねようと、近くにいた高齢の白人女性に声を掛けた。だが、記者だと名乗った途端、こう返された。「あなた、フェイク(うそ)メディアじゃないでしょうね」

 この日もそうだが、トランプ氏の演説内容は「今ほど勝利を収めた政権はない」などと成果を誇張し、野党を抵抗勢力とこき下ろし、最後は聴衆と「米国を再び偉大に」の決めぜりふで締めくくるのが定番だ。それに加えて、11月の中間選挙が近づいた最近は、政権に厳しい論調の主要メディアを「フェイクニュース」と連呼し、非難する場面を明らかに増やしている。

 「私(記者)は中立だから」と、何とか“フェイク疑惑”を拭い去ると、高齢女性は雑談に応じてくれた。ただ、トランプ氏に感化されているのかどうか、政権と対立する米テレビ局を名指しし「昔はまともだったのに、今は偏向報道がひどいから全く見ない」と断じた。

    ☆    ☆

 トランプ氏の成果が世間に伝わらないのはメディアのせいだ-。集会終了後、話を聞いた白人男性のジェームズさん(23)もそんな不満を隠さなかった。「多くの人がトランプの話は大げさで言い過ぎだとけなすが、景気が良くなっているのは事実だ。トランプの話を直接聞けば誤解だと分かる」

 野球のバット製造業を始めたばかりのジェームズさんは、トランプ政権発足当初、経済再生の公約を実現できるか不安だったという。「でも、減税政策の恩恵を受けた。満足だ」と興奮気味に語る表情からは、不安はもはやうかがえなかった。

 「メディアは国民の敵」と言い放ち、正しいのは自分だけとの姿勢を強めるトランプ氏だが、その発言には事実に基づかないものが多い。これに対し、主要メディアは事実を明らかにしようと、新聞など既存の媒体だけでなく、ツイッターなどのソーシャルメディアも駆使して問題を提起し続けている。だが、トランプ支持者の多くは耳を貸そうとしない現実がある。

 久しぶりに見たトランプ氏の集会で、記者の目にはワンパターンにしか映らない演説を熱心に聞き入り、拍手喝采する支持者は以前にも増して熱かったが、心酔のあまり異論を寄せ付けないような狂信的とすら思える雰囲気に、怖さを感じずにはいられなかった。 (田中伸幸)

=2018/08/25付 西日本新聞夕刊=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]