【DCの街角から】「トランプの実験」から学ぶ

 米IT大手グーグルの画像検索で「idiot(愚か者)」と入力すると、トランプ大統領の写真が続々と出てくるのをご存じだろうか。どうしてそうなるかについては「大統領をおとしめようとする陰謀だ」という指摘もあるが、「多くの国民がトランプ氏をそう見なしている」と考えるのが自然だろう。

 トランプ氏は就任2年目の今年、さらに強硬な姿勢で政権運営に当たった。だがそれに比例するように「反トランプ」の国民も大規模デモを繰り返すなどして対決色を強めた。

 「トランプは米国の恥」「すぐに辞めろ」-。トランプ氏を心底嫌うデモ参加者らの怒りに満ちた言葉を聞くたび、そのあまりの激しさに、逆に「この熱気は持続するのか」と思うこともあった。だが、11月の中間選挙でも勢いは衰えず、議会下院選で野党民主党の勝利をもたらした。来年以降も、彼らの悲願である2020年大統領選のトランプ氏再選阻止を果たすまで、熱気は冷めそうにない。

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 気掛かりなのは「反トランプ」の中に「トランプ氏が大統領でなくなれば社会は良くなる」と短絡的に語る人が少なくないことだ。確かに、トランプ氏の極めて不寛容な移民政策や独善的な追加関税措置など、混乱をいとわない政策の数々は批判があって当然で、「トランプ後」に期待したくもなるだろう。

 しかし、移民の流入や経済のグローバル化により「安全が脅かされる」「地元の工場がつぶれる」などと焦燥する人が、特に地方の白人労働者層を中心に大勢いて、トランプ氏の政策は彼らに向けられている。中間選挙で苦戦したとはいえ、上院では与党共和党が過半数を維持し、支持率は今も4割を超える。彼らの多くは「トランプ氏が暮らしを良くしてくれる」(70代白人男性)と固く信じている。

 こんな状況では、仮にトランプ政権が短命に終わったとしても、その後には逆に「親トランプ」の怒りが増幅され、深刻な社会の分断がより激化しかねない。先週、米国の人気テレビ番組で「トランプ氏が大統領でなかったら皆、笑顔になる」というコメディーが演じられたが、事はそう単純ではない。

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 ただ、「反トランプ」にもいろいろいる。年末に酒席を共にした40代の男性は「トランプ政権は社会実験だ」と語った。トランプ氏の登場は白人労働者の苦悩など米社会が見過ごしてきた課題を浮き彫りにした点で意義があり「解決策を考え、課題を乗り越えることで米国はまた強くなれる」との見解だった。

 単に「愚か者」と叫ぶだけでなく、「実験」から得られる教訓を生かす。そんなポジティブ思考を持つ人々の存在に米国の底力を感じる。 (田中伸幸)

=2018/12/22付 西日本新聞夕刊=

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