【DCの街角から】温暖化対策、春は遠く

春到来を予言するグラウンドホッグの「フィル」。この後、イベント関係者が「春近し」のお告げを代読した=2日、東部ペンシルベニア州
春到来を予言するグラウンドホッグの「フィル」。この後、イベント関係者が「春近し」のお告げを代読した=2日、東部ペンシルベニア州
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 「間もなく春が訪れる。美しい春になるだろう」

 ワシントンから北西に車で約4時間のペンシルベニア州であったイベントで、こんな「お告げ」を聞いた大勢の観客から大歓声が上がった。

 130年以上続く「グラウンドホッグデー」。毎年2月2日の朝7時半ごろ、「フィル」という愛称のリス科の一種グラウンドホッグが冬眠から目覚め、巣穴から顔を出した姿の影が見えるかどうかで春の到来を占うという伝統行事だ。

 今年は中西部を中心に襲った猛寒波の真っ最中で、中西部に近い会場も氷点下15度前後。靴下を重ねばきしても爪先に痛みを感じ、毛布で体をグルグル巻きにする人もいた極寒の中でのフィルの予言に、観客も私もほっこりとした気分になった。

 それでも、あまりの寒さに「これを異常気象と思わないか」と数人に聞いてみたところ「もっと寒いこともある」(地元の高齢女性)といった声も含め、同調者はほとんどなし。

 地球温暖化問題の取材で訪れた南部ノースカロライナ(NC)州のハリケーン被災地ルポ(4日付朝刊に掲載)でもそうだったが、米国内には「気候変動が既に発生し、自然災害が大型化している要因になっている」という科学的見地に基づく指摘に疑問を感じ、耳を貸そうとしない人たちが少なくない。トランプ大統領もそうだ。

 ルポ取材に協力してくれたある研究者は「『気候変動』や『温暖化』という言葉を取材相手に安易に使わない方がいい」と助言してくれたが、実際、こうした言葉を使って取材依頼をしてしまい、完全に無視されたケースも複数あった。

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 とはいえ「温暖化懐疑派」が異常気象に全く無関心だとは言い切れない。「日本でも最近、豪雨が多発して犠牲者が絶えない」と話すと熱心に耳を傾けてくれたし、特に、インフラ整備などの災害対策には関心が高い様子だった。温暖化原因説は受け入れないものの「災害は科学技術の力で克服できる」と、科学への不信と過信がない交ぜになっている住民もいた。

 「もっと対策を急がないと間に合わない。異常気象の原因が温暖化かどうかと言い争っている場合ではない」。NCの東部沿岸部にある自宅前の農地が、海水面上昇によって深刻化した塩害で耕作に適さなくなったと嘆いたマックさん(67)のように、連邦政府や州など公的な対策強化を求める人も多い。

 しかし、今後の施政方針を語った5日の一般教書演説で、トランプ氏の口から、気候変動に関する言及は一切なし。「冬の時代」と言われる米国の温暖化対策の進展は当面、「春近し」とはいきそうにない。 (田中伸幸)

=2019/02/09付 西日本新聞夕刊=

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