大学受験(3)支援日記 生徒支える教諭の一筆

学習記録ノート「夢に向かって」には、生徒の率直な思いや教諭からの厳しくも温かい言葉が並んでいた
学習記録ノート「夢に向かって」には、生徒の率直な思いや教諭からの厳しくも温かい言葉が並んでいた
写真を見る
写真を見る

 「夢に向かって」。ノートの表紙にはそう、タイトルが記されていた。

 福岡県立宗像高校(宗像市)が取り組んでいる「学習記録ノート」。生徒一人一人が日々の学習時間や出来事を書き込んで教諭に提出し、教諭が一筆コメントを返す。1、2年生は担任に提出するが、3年生は教諭を自由に選べる決まりで、校長に提出する生徒もいる。生徒と教諭の心をつなぐ支援日記になっている。

 3年生になるとやはり、受験の悩みが色濃くなる。ある生徒のノートを見せてもらった。

 5月 「(部活動の)大会で負けたショックであまり勉強できなかった。明日からがんばる」(生徒)「最後は気持ちの戦いになるぞ」(教諭)

 6月 「部活も終わったのでどんどん復習したい」「3年生も第2段階に入った。新しい生活リズムを早く自分のものにしよう」

 志望校を決定する2学期。生徒の文面はより切迫する。

 9月 「英語の点数が上がらない(泣)」「焦らず繰り返し取り組んで、弱みを消していこう」

 11月 「携帯の待ち受け画面を九大に変えた。あー、受かりたい。九大行きたい。神様~」「あなたの努力を見てくれていますよ」

 励まし続ける教諭も、時には厳しい言葉を投げかける。

 12月 「地学で67点しか取れなかった。何でこんなに頭悪いのかな」「ここから伸びる人は、覚悟を決めて黙々と努力する人。いちいちうろうろして、つかめるような目標じゃないよ、九大は」

 1月 「来週はいよいよセンター試験。自分を信じて最後までがんばる」「全国を探しても、あなたほどがんばってる人はいない」

 進路指導部主任の井地(いじ)誠教諭(47)は、約40人分のノートを2時間かけて目を通し、返事を書き込むのが日課だ。同校に着任して11年目。責任の重さをかみしめ、ペンを握る。

 「生徒たちのちょっとした変化やサインに気付いて、進むべき道を示してあげるのが僕らの役割」と井地教諭。押すべきか引くべきか、優しく励ますべきか喝を入れるべきか。一人一人の顔を思い浮かべながら、言葉を紡ぐ。メールやスマートフォンで簡単にやりとりできる時代だからこそ、「アナログな手書きの方が気持ちがストレートに伝わるし、心と心が通じ合う」と考えている。

 同校で学習記録を始めたのは2001年。当初は生徒が記入するだけだったが、次第に教諭がコメントを返す形が定着すると、学力も上昇カーブを描き始めた。「うちは入学後にグッと伸びるからね」と橋本浩校長。生徒の心の動きをつかむことで、より生徒に寄り添った指導につながっていったという。

 福岡市と北九州市のほぼ中間に位置するベッドタウン。地元には大手予備校がなく、予備校に通うのは1割未満。それだけ学校に対する期待は大きい。

 進路指導室には、大学別にこれまでの入試問題をまとめた「赤本」と一緒に、卒業生に頼んで残してもらった学習記録ノートが並ぶ。自分の成績表や、アイドルの切り抜き、友人との記念写真も挟まれ、どのノートにも青春が詰まっている。

 休み時間や放課後に訪れる生徒たちは、そのノートをめくり、先輩たちの格闘の軌跡に思いをはせ、悩みを共有し、孤独な受験勉強を乗り切る。同校が積み上げてきた貴重な財産だ。自身のノートを、受験会場に「お守り」代わりに持っていく生徒も多いという。

 いよいよ私大入試が本格化し、国公立大入試へ。自分を信じ、先生との心の対話を思い返し、頑張れ。

   ■   ■

 高3の悩み 成績が6割

 大学受験を控えた高校3年生は進路選択にあたってどんな悩みを抱えているのか。「ベネッセ教育総合研究所」が昨年、全国の受験生300人を対象に実施した「高校生活と進路に関する調査」では、半数以上の生徒が成績や自身の進路に悩んでいる実態が明らかになった。「進路に関する情報不足」「家族と意見が合わない」を挙げた受験生も3人に1人に上り、保護者や学校との情報交換や話し合いが求められているようだ。

=2016/01/24付 西日本新聞朝刊=

 シリーズ「教育はいま」

 ◆大学受験(1)赤点からの挑戦 底なし全入時代の「格闘」

 ◆大学受験(2)高校間攻防 国立合格率がステータス

 ◆大学受験(4)記者ノート 悩む18歳 ただ進むしか

西日本新聞のイチオシ [PR]

ボートレース3連単直前予想

西日本新聞のイチオシ [PR]