通学路(1)同行ルポ 一緒に歩いて知った

緑色にカラー舗装された路側帯
緑色にカラー舗装された路側帯
写真を見る

 間もなく新学期。特に新入生がいる家庭にとって、心配事の一つが子どもの登下校だろう。交通事故や犯罪に巻き込まれはしないか。そんなことを考えさせられるニュースも目立つ。

 2月中旬、午前7時20分ごろ。まだ月の輪郭がくっきりと見え、風は冷たい。福岡市城南区の七隈小学校区は、市中心部に近く、マンションも多い住宅街だ。約2キロを歩いて通う低学年の子どもたちに同行した。

 「おはよう」。近所の3人が連れだって登校が始まった。すぐに交差点で立ち止まる。「まだ来てないね」。そうつぶやく子の隣で、別の子が時計をチェック。「まだ早いもん」。ほどなく女の子が駆け足で合流した。学校に集団登校の決まりはないが、保護者同士が話し合い、一緒に通学している。

 交差点では、緑色の旗を持った大人が、子どもたちの横断を見守ってくれていた。この日は道中で7人に出会った。

 学校が近づくにつれ、子どもの数が増え、歩道いっぱいに広がった。体を寄せ合い、おしゃべりに熱が入る。そのすぐ近くを通勤途中と思われる車が次々と通る。ガードレールがない所もあり、ひやひやした。

   ◇   ◇

 歩道がない道に入った。白線が道の端に引かれ、その外側が緑色にカラー舗装された路側帯が現れる。何のサインだろう。

 「運転手に通学路だと知らせ、子どもに路側帯を歩いてもらうための目印です」。市道路計画課の説明だ。道幅が狭く、歩道を造れない場合の次善の策で、こうしたカラー舗装や歩道は市内小中学校の通学路の68%(2015年度末)を占める。

 七隈小の淺野泰夫校長(59)にも、通学路の安全対策を尋ねた。できるだけ小路の通行を避け、自宅近くの幹線道路に誘導するのがポイントの一つだという。「広い道路ほど信号や横断歩道が整備され、人の目が多いため不審者対策になる」

 校区内には「歩車分離信号」のある交差点が2カ所ある。歩行者が交差点を横断中、車が横断歩道を横切らないよう信号が制御されていて安全そうだが、学校側は「斜め横断は駄目」と、児童に注意しているという。

 歩行者は斜めに横断できないのだが、急ぐ大人たちは斜めに横断しがち。でも、県警交通規制課によると「横断距離が1メートル延びるごとに『青信号の時間』が1秒以上必要」。低学年の脚では青信号の間に横断しきれないリスクが潜んでいるのだ。

   ◇   ◇

 歩き始めて約30分。ようやく学校に着いた。「子どもたちにとって毎日、大変な道のりですね」。同行した児童の母親に話を向けると、こう言われた。

 「行きはまだいいんです。人が多いから。問題は帰り。1年のときは、本当に無事に帰れるのか、毎日心配しました」

 終業時刻に歩く時間をプラスし、帰宅時刻を約束していたそうだ。「1人で帰らない。近所の子と一緒に帰ること」。口酸っぱくそう伝え、通学路にある幹線道路まで迎えにも行っていたという。

 「風が強い雨の日は、傘が飛ばされないようかっぱを着る」「歩道を歩くときは、そばを通る車に当たらないよう、荷物は振り回さない」「途中でトイレに行きたくなったらここ」「地震が起きたときの避難先は」…。親子でそんな話を折々にしているという。

 私も保護者の一人。長男が入学したときの気苦労を思い出した。当時は長崎県に住み、小学校にも近かった。自宅前の通学路に児童の声が聞こえ始めたころ、登校するようにしていた。「車が必ずよけてくれるとは限らない。こっちが気を付けないと」とも伝えた。

 下校時間帯にはまた別の姿があるのだろう。知っていると思っていた子どもの通学路。一緒に歩いて、初めてその一端を知った。

 ◆通学路 学校保健安全法に基づき、各学校は児童生徒の安全を確保するため、通学を含めた学校生活の安全に関する指導について、計画を策定し、実施する義務がある。福岡県教委によると毎年度、各学校長が通学路を決定し、教育委員会が認めることが多い。公園内や私有地も、特別な事情があれば通学路に認められる可能性もあるが、福岡市教委は「道ではない」として設定していないという。通学路で事故に遭うと、学校を通して子どもが一括で入る日本スポーツ振興センターの保険が適用されるが、学校が指定した通学路以外を通っていた場合は対象外となる。

=2017/03/05付 西日本新聞朝刊(教育面)=

西日本新聞のイチオシ [PR]

西日本新聞のイチオシ [PR]