道徳の授業(4)評価 どんな通知表になるの

道徳の「評価」のあり方について語る堺正之・福岡教育大教授
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 小中学校で道徳が教科化されると、通知表での評価が新たに加わる。算数や国語のような数値評価ではなく、児童生徒の成長の様子や学習態度を、文章による記述式で評価するという。先生たちは子どもの何に着目し、心の成長をどう評価するのか。小中高校教員や研究者でつくる「日本道徳教育方法学会」事務局長を務める、福岡教育大の堺正之教授(60)に聞いた。

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 -いじめ問題の深刻化などを受け、道徳教育の見直しを求める声は少なくない。ただ、そんな人たちからも評価については疑問の声も聞かれる。

 「学習指導要領ではもともと、指導と評価は一体的なものとして考えられてきた。道徳も同じ。だが、これまで教科外だったこともあり、数値評価をしてこなかったことが拡大解釈され、『一切評価しない』という誤ったイメージが作られてきた」

 「指導の前後や途中に、子どもの実態や反応を捉えて評価しないと、そもそも指導内容が見直せない。実際の評価は、ほかの子との比較ではなく、子ども自身の考え方の変化を捉えることがポイントだ。先生の主観ではいけない」

 -授業改善のためにも一定の評価は必要だと。評価する教員に求められることは。

 「先生は、観察者の立場から評価するのではない。先生のまなざしが子どもたちの考えに影響を及ぼす。先生には、よりよい生き方を目指し、努力しているという姿勢があればいい。子どもたちに課題や励ましを与えてくれるゲストティーチャーを招くことも有効だ」

 「先生同士で意見交換をすることが大切。子どもが保護者と一緒に教科書を読み、宿題をする機会をつくることで、学校と家庭の共通理解も生まれる」

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 -評価と言ってもピンと来ない。どんな文章になるのか。

 「例えば、毎回の授業でノートを配布し、書き込み内容を振り返って、子ども自身が心の変化に気付いていく。その様子を捉え、先生たちが評価する。授業中の発言、学習の様子、友達の意見を聞いて自分の考えを作っているかどうかなども踏まえた文章になるだろう」

 -子どもたちの学校全般での生活態度と評価は結びつくものなのだろうか。

 「線引きは難しいが、授業内と考えた方がいい。多くの学校の通知表には、思いやりや自主性、責任感を評価する『行動の記録』がある。これとは切り離し、授業や宿題の中で評価した方がいいだろう」

 -評価が加わり、「先生が求める模範回答を言おう」とする児童生徒が増えるのでは、といった懸念も少なくない。

 「文科省の2005年調査によると、小中学生が学校で身に付けたい力として最も重視したのは『良いことと悪いことを区別する力』だった。子どもたち自身も悩み、自信を持って善悪を判断することが難しくなっていることの表れだろう。子どもたちが主体的に学ぶきっかけになっていくと思う」

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 -「愛国心」への態度まで評価されるのだろうか。

 「愛国心は自国を礼賛することではない。生まれ育った社会や所属する社会に対して抱く愛着は、ごく自然なもの。生きる支えとなることもあるため、互いに尊重し、多様性を知ることの大切さを子どもたちに理解させる必要がある」

 -そもそも、学校の道徳授業の役割は何なのだろうか。

 「親の権威と結びついたような家庭のしつけとは違う。無条件の好意と公平公正はぶつかることがあるが、その矛盾や対立を含めて多面的、多角的に考えられるようにすることが学校の役割だ。従来は高学年からだった『公正、公平、社会正義』を今後は低学年から学ぶことになる。学校では、『なぜ決まりは守らないといけないのか』など、子ども自身が問いをつくる段階から始まる」

 ◆道徳の評価 記述評価の例として、中央教育審議会(文科相の諮問機関)答申に向けた識者懇談会では「子どもたちの学習の様子を記録し、その意欲や可能性をより引き出したり、励まし勇気づけたりするような記述」としているが、具体的な評価方法や評価ポイントがまだ明確ではない。道徳の評価を巡っては、「心の問題を成績評価するのは難しい、なじまない」とする意見も根強く、識者の間でも賛否が分かれている。テストによる点数などを主な評価基準とする「教科」とは区分するため、「特別の教科・道徳」と位置づけられている。

=2017/04/23付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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