学校のハテナ(3)鉛筆 教室で削ってはいけないの?

鉛筆を使い、ノートに文字を書き込む小学生。芯が軟らかい「2B」が主流となり、以前よりすり減りやすくなっている
鉛筆を使い、ノートに文字を書き込む小学生。芯が軟らかい「2B」が主流となり、以前よりすり減りやすくなっている
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小学2年生の筆箱の中身。削った鉛筆を差し込む「ホルダー」が左側にある。付属の鉛筆削りもある
小学2年生の筆箱の中身。削った鉛筆を差し込む「ホルダー」が左側にある。付属の鉛筆削りもある
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 「鉛筆は5、6本用意し、毎日、家で削ってきましょう」。福岡市の小学校に子どもが通う保護者に、学校からこんな連絡文が届いたそうだ。「教室で削ってはいけない」と受け止めている保護者も少なくない。もちろん家でも削るが、学校で芯がすり減ったり、折れたりもする。どんな事情があるのか?

 学校の規律を整える狙いだが

 「削ったらいかん、ということはありませんよ」。30代の中堅教員に尋ねると、開口一番否定された。あくまで禁止なのは授業中なのだという。それにしても、なぜ念押しする必要があったのだろう。

 低学年ほど何かと気が散る子どもたち。授業中に1人が席を立ち、教室の端にある鉛筆削りまで移動すると、別の子がちゃかしたり、まねをしたりして、教室が騒がしくなる。そんな事態を想定し、授業に集中できるよう、家での鉛筆削り徹底を呼び掛けているという。

 子どもたちが使っている箱形の筆箱には大抵、小さな鉛筆削りが付いている。クルクル手で回しながら削る簡易型。授業中は、これも使ってはいけないのだろうか。

 「低学年だと手の力が弱くて、うまく削れない子がいる。『削れません』と児童が言い出せば、授業をストップして教えないといけない」

 私が小学生だった30年近く前は、鉛筆がすり減ると席を立ち、教室にあった鉛筆削り機を使っていた。もうそんな時代ではないのか。

 福岡市の文具店主によると、約10年前は低学年は「2B」、中学年は「B」、高学年は「HB」を購入する場合が多かったが、今では小学校全体を通して「2B」が主流になっているという。より軟らかい、濃い鉛筆を使うようにもなっていて、すり減りやすい。筆圧が強く、芯をよく折る子は休み時間、鉛筆削りに追われているのかもしれない。そういえば、息子もよく芯を折っていた。

 「2B」主流ですり減りやすく

 息子の学校からは、プラスチック製の箱形の筆箱を推奨するプリントが届く。ずっと疑問だったので、同じ教員に尋ねると、こんな答えだった。

 「ふたがパカッと開き、中身が一目で分かる。子どもたちの所持品チェックを考えると、最適な構造なんですよね」

 点検のポイントは(1)家庭で鉛筆をちゃんと削ってきているのか(2)鉛筆は何本あるか(3)学校に無関係のものは入っていないか、など。「どこまで厳しくするかは教諭の裁量だけれど、学習の規律を整えるために徹底的にやるときもありますよ」

 チャック式の筆箱は、中身を出さないと分からないし、金属製だと、落下音が補聴器を使用する子に耳障りになる。そんな理由もあってプラスチック製の箱形なのだという。

 鉛筆に付けるキャップも、学校としては「余計なもの」だという。鉛筆を削っているかどうかが教員に見えにくいうえ、床に落として誰かが踏めばすぐに破損してしまう。つまり、トラブルの火種になりかねないという訳だ。そんな学校の要望を見越してか、最近の箱形の筆箱には、鉛筆を差し込んで固定する「鉛筆ホルダー」なるものも付いている。せっかく削った鉛筆の芯が折れないように。

 背景の一つに小1プロブレム

 鉛筆削りについて取材し、その背景の一つに浮かんできたのは「小1プロブレム」だ。

 幼稚園や保育園から上がってきた小学1年生が、学校生活になじめず、授業中に騒いだり、動き回ったりする問題。学級崩壊につながったり、担任教諭が心身とも疲弊したりし、休職に追い込まれるケースも少なくない。1990年代後半にクローズアップされ、そう呼ばれるようになった。

 遊びの中で学ぶ幼稚園から、授業の中で学ぶ小学校へ。クレヨンから鉛筆へ。子どもたちの環境が変わり、それに適応できない子も目立ち、学級運営や学習規律に神経をとがらせる学校対応の一つでもあるようだった。家庭での鉛筆削りが徹底されない現実もあるのだろう。

 1本の鉛筆の向こうに、学校現場の悩みと子どもや保護者の戸惑いが交錯していた。

=2017/05/21付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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