プログラミング(3)小中高連携 学びを積み上げる

技術・家庭科の授業で、50センチ四方の角にコーンを立て、ロボット車を周回させるプログラムを実践する高森中の3年生
技術・家庭科の授業で、50センチ四方の角にコーンを立て、ロボット車を周回させるプログラムを実践する高森中の3年生
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 プログラミング学習自体は新しいものではなく、中学生たちはいま、技術・家庭科で習っている。ゆとり教育を見直した2012年度の学習指導要領改定で導入された。背景には、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)の進歩が速まる中、プログラマーなどIT関連の人材不足への懸念があった。20年度からの新学習指導要領は、その初歩的な学習を小学校段階から導入しようとするものだ。

 そんな中、熊本県高森町では小中高校が連携し、12年間でプログラミング学習の学びを積み上げようとする、新たな試みが始まっている。

 課題を分析・分解する

 町立高森中の3年生は5月9日、技術・家庭科の授業でプログラミング学習に取り組んでいた。単元は「プログラムによる計測・制御」。ロボット車を使い、50センチ四方のコースを周回させるためには、どうプログラムを組んだらいいか。使う機能は「前進」と「右折」だけで、時間入力を工夫することで調整する。4人ほどのグループで話し合い、パソコンを使ってプログラムを組み、実践した。

 授業の冒頭、藪田挙美(たかはる)教諭(40)は言わずもがなの質問をした。「ロボット車はどう動く?」。ある生徒が「まっすぐ行って、横に行く」。「では、横に行くってどういうこと?」「右に90度回転」。藪田教諭は「あの場面に大切な学びがあった」と、授業後に振り返った。

 「生徒たちの頭の中にある、ぼんやりしたイメージや思考をどう言語化していくか。課題を解決するためには、その課題をどう分析・分解し、プログラムを組めばいいのか。それがプログラミング学習のポイント」

 小学校から「思考の言語化」

 高森町は教育改革の「実験場」のようでもあった。

 電子黒板などを使ったICT授業やコミュニティ・スクール制度(地域参加型の学校運営)に加え、本年度からは熊本県では初の「義務教育学校制度」も導入した。六三制見直し、中1ギャップ解消などに向けた、小中一貫型の新たな学校運営だ。プログラミング教育についても、単なる小学校の授業改革ではなく、小中高校連携の学びの姿を模索している。

 同町では既に、小学5、6年で地域を学ぶ総合学習(ふるさと学)の中で、プログラミング学習を取り入れている。

 5年生では、地域に関する3択クイズを、児童がタブレット端末を使って作製し、復習に役立てている。問題を解くのではなく、自ら設問するところが新鮮だ。その問題づくりに簡単なアプリケーション(応用ソフト)を使い、プログラミングの基本パターンの習得に生かす。

 6年生では「4年生がふるさとを楽しむためのコンテンツをつくろう」と、プログラミングにつながる「フローチャート」(思考の分岐、対処の流れ)も活用しながら、授業を進めているという。

 12年かけて教育改革の「実験」

 高森町が一連の教育改革に取り組む背景には、地域で急速に進む過疎・少子化への危機感があり、昨年4月の熊本地震からの復興に向けた21世紀型の人づくりがある。

 プログラミング教育もその一環で、蓄積がある藪田教諭が小学校や高校に「兼務」という形で出向き、授業を実施したり、現場教員と話し合ったりして、系統的なカリキュラムづくりを進めようとしている。

 「人口減少や震災からの復興、農業や観光を核にした地域づくり…。そこにはどんな原因や課題があり、地域の再生プログラムをどう組んだらいいのか。コンピューターとも対話しながら、筋道や手順を考えていく。プログラミング学習は、そんな次代を担う子どもたちの育成につながっていくと考えている」

 高森中に今春着任した堺昭博校長(53)はそう話した。

 ◆プログラミング コンピューターは、「入力」「記憶」「演算」「出力」「制御(処理の流れを変える)」という五つの指令文を組み合わせたプログラムによって作動する。プログラミング学習は、その具体的な指令の言葉と、手順の流れ(アルゴリズム)の基礎を学ぶ。ただ、文部科学省が求める「プログラミング的思考力」とは何か、具体的な授業のあり方などについては、まだ見えない部分も多く、学校現場での模索が始まっている。

=2017/06/18付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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