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模擬国連キャンプ(上) 大学生が「国代表」として討論

国際問題について議論する学生たち。論点整理や各国との交渉、討論の発言には時間制限が設けられ、集中力が試された
国際問題について議論する学生たち。論点整理や各国との交渉、討論の発言には時間制限が設けられ、集中力が試された
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時にはみんなで車座になって議論。ボードには国名が書かれ、学生たちがその国を代表して意見を交わした
時にはみんなで車座になって議論。ボードには国名が書かれ、学生たちがその国を代表して意見を交わした
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互いに課題と解決策が合致するパートナーを探すゲーム。参加者同士が一気に仲良くなった
互いに課題と解決策が合致するパートナーを探すゲーム。参加者同士が一気に仲良くなった
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開発援助、温暖化…英語で楽しく

 欧米を中心に授業や課外活動として広まる「模擬国連」が今夏、九州で初めて大分県九重町で開催された。グローバル化に対応し、世界が直面する国際問題への理解や交渉術、国際感覚を養う教育プログラムで、4日間のキャンプ形式で実施された。九州大と立命館アジア太平洋大(APU)、英国・オックスフォード大の学生13人が企画運営した。模擬国連キャンプとはどんな学びの場なのか。記者も議論の輪に加わり、一緒に考えた。

   ◇   ◇

 参加したのはインターネットの募集で集まった東南アジアの大学生や留学生のほか、日本の大学生や高校生ら40人。4日間寝食を共にするキャンプの共通言語は英語。留学経験のある私も、さび付いた英語を駆使し、悪戦苦闘の日々を過ごした。

 キャンプの最終目標は国連と同様、参加者が各国の代表となり、議論を重ね、他国と交渉し、決議を採択すること。初日は仲間意識を高め、コミュニケーションを深める取り組みに多くの時間を割いた。

 その一つが「パートナー探し」。地球温暖化など国際的な課題、その解決策のいずれかが書かれた用紙が全員に配られ、合致する相手を見つけ出すゲーム。「留学生たちのノリが良くて、緊張もほぐれ、みんなと打ち解けられた」と日本の大学生。

 最も脂汗をかいたのは2日目のワークショップ。3人一組で相手チームと「途上国への政府開発援助」に反対の立場で討論することに。私の仲間は、20歳以上若いインドネシア人の大学生と日本の高校生だった。

 与えられた時間は15分。急いで論点整理のための意見を交わす。「途上国側で汚職がはびこるのでは」「民間投資を妨げる」。この二つの視点から反対することを決めた。

 学生2人は早速、「政府開発援助」や「汚職」をキーワードにインターネットで検索した。非政府組織(NGO)の報告書や論文を見つけ、反対意見のための具体的根拠をつかむ。論点を再び整理し、それぞれの発言内容を確認し、いざ発表。日本語でも難しい内容を英語で伝えるのは至難の業。2人の協力で何とか切り抜けた。

 「相手を単に論破するのではなく、異論も聞き入れた上で、論理的、具体的に互いに議論を深めていくことが重要」。指導役のAPUの留学生がこう解説し、両チームの健闘を拍手でたたえてくれた。

   ◇   ◇

 3日目は「北朝鮮の核開発」と「持続可能な開発」のテーマに分かれ、ペアで各国代表となり、各国との調整、草案づくりが深夜まで続いた。この草案が決議として採択されるはずだったが、最終日、学生たちを待ち受けていたのは大どんでん返しだった。

 採択の直前になって突然、「大ニュース」が飛び込んできた。「北朝鮮で原発事故発生」「南太平洋の島が水没の危機」。主催者があえて用意した、仮の状況設定。学生たちはこれまでの議論を生かし、北朝鮮への原子力専門家の派遣や避難民の受け入れなど緊急対策を次々と打ち出すことになった。

 最後はみんなで車座になり、一人ずつ感想を発表した。

 「これからもっと国際情勢や英語を学びたい」「学校の授業と違って、本当に楽しく、リアルに世界を学べた」

 引っ込み思案だった日本の高校生もいつしか大学生たちと一緒に学び、自分の考えを発言できるようになっていた。

 「講義を聞いているだけの勉強は面白くない。難しいことを楽しく学ぶ」。企画運営した学生たちの、このキャンプへの思いだ。

 一人では困難な作業でも互いに助け合い、チームワークで乗り越えた。文化や立場の違いによる感情論を抑え、異論に耳を傾け、多様性に目を向けると、自分たちの主張はより研ぎ澄まされた。そして何より、困難な問題を自ら進んで考える面白さを体感した。

 ◆模擬国連 1950年代に米国の大学で始まったとされる。国際的な課題をテーマに、担当国の政策や歴史、外交関係を踏まえ、実際の国連と同じように学生たちが各国の政府代表として議論し、決議を採択する。
 国際政治の仕組みや国際問題、交渉術などを学び、解決策を考え、意思決定までの過程を体験できる。ディベート(討論)、プレゼンテーション(発表)力、国際理解を深める教育プログラムとして注目されている。欧米では大学生たちがサークル活動として取り組んでいる。

=2017/11/05付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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