主権者教育 受けたい授業は? 10代大学生が憲法学者と考えた

学生に質問を投げかける鹿児島大の渡辺弘准教授
学生に質問を投げかける鹿児島大の渡辺弘准教授
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主権者教育をテーマに意見を出し合う鹿児島大1年の学生5人
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「政治自ら考える」気づかせて

 18歳選挙権が導入され、2度目の国政選挙となる衆院選が終わった。突然の衆院解散に、各高校の「主権者教育」も大急ぎで、授業の形もまだぼんやりしている。18歳投票率=50・74%、19歳同=32・34%(全体投票率53・68%)についてもどう捉えればいいのか、モヤモヤ感がぬぐえないでいる。そこで、かつて取材した鹿児島大の渡辺弘准教授(49)=憲法学=を訪ねた。当事者の意見も聞きたいと思い、18、19歳の大学1年生5人にも集まってもらった。

   ◇   ◇

 「どの記事が面白い?」。渡辺准教授は、衆院解散から投開票日までに実施された「主権者教育」についての新聞記事を並べ、大学生に問い掛けた。

 藤崎渚さん(19)が挙げたのは10月10日の佐賀新聞。〈教諭らを候補者に見立て、投票時の判断基準について考えた〉。先生が「選挙ポスター」になり、「公約」を訴えている。

 渡辺准教授が質問する。「架空と、実際の立候補者はどっちがいいと思う?」

 より身近なテーマから、政治や選挙を考えてもらいたい-。先生はそう考え、授業に一工夫加えたのだろうが、大学生からはこんな意見も出た。

 「実際の公約とは全く違う。選挙の流れは学べたとしても、何かが足りない」「内容が易しすぎる」

 どんな授業であれば、興味を持って学べるの? 渡辺准教授が口を挟む。消費税、子どもの貧困、働き方…。政治に関わる問題は実は身近で、無数にある。藤崎さんがつぶやく。「自分が関心がある政治テーマは何か…。そんなことから考えた方がいいかもしれませんね」

   ◇   ◇

 授業に「生の政治」を取り入れる手法とその課題は、いくつかの記事が取り上げていた。

 〈高校生が候補者に手紙を送付〉(10月16日、河北新報)

 〈急な衆院解散で高校の授業計画に大幅変更〉(9月25日、下野新聞)

 溝口史華さん(19)が言う。「高校3年でこういう時間を設けるのは現実的に難しい。もっと下の学年で授業に取り入れるのがいい」

 主権者教育で問われているのは、小中高校の接続教育(学習の連続性と積み上げ)なのだろう。茂利なるみさん(19)も「18歳選挙権は今年からではない。もともとカリキュラムに組めなかったのか」と話した。

 学生がこれまで受けた授業では、どんな内容が印象に残っているのだろう?

 「生涯に使う金額のシミュレーションをした授業」「原発是非の議論」「職員室前の壁に貼られた新聞記事について」

 5人で一致したのは「自ら考え、意見を述べ合う」。政治や選挙に限らず、豊かな議論を生み出していくための「思考流儀」を求めているようだった。

   ◇   ◇

 選挙制度のあり方も議論になった。

 住民票を実家に残したまま、遠くの大学に進学し、投票が難しくなる生徒も少なくない。溝口さんもその一人だった。だから、若者の低投票率を取り上げた記事には「怒られているみたいで、ぐさっと来る」。

 渡辺准教授は「それって、おかしくない?」。国会議員の選出は、憲法で定められた権利。にもかかわらず、住民票がない場所での投票が難しくなる。その身近な現実こそが、政治参加への入り口だと。藤崎さんもうなずき、「マイナンバーを使い、住民票に関係なく投票できればいいのに」と提案した。

 渡辺准教授は強調する。「課題解決につながるよう、今の制度を改善したり、ルールを作ったりするのが主権者に求められた役割」。投票行動をまねたり、政治や選挙のいろはを学ぶ……。そんな授業もあっていい。でも、政治や制度は国から与えられるものではなく、有権者が議論し、一票に悩み、作り上げていくものだ。

 若者が求めているのは、そんなことにハッと気づかせてくれる授業じゃないかと思った。

 ◆渡辺准教授からの授業提案

 主権者教育のあり方を問う主権者教育-。渡辺准教授は、そんな授業の姿も考えるという。

 (1)なぜ「18歳」なのか 当選した議員が制定・改正した法律が適用される期間は、若年ほど長い。米国の人口統計学者ドメインは、選挙権年齢に満たない子どもの民意も、親が代行して政治に反映させる投票方式を提唱する。この考え方、どう思う?

 (2)投票権の制約 憲法15条の公務員選定権は「国民固有の権利」。憲法下の公職選挙法で定められた「投票は住民票の所在地」という制約は妥当か?

 (3)外国籍児童・生徒への配慮 グローバル化が進む中、高校で教員が「投票に行こう」と呼び掛けた場合、外国籍の生徒はどう思うだろう。多様な政治参加のあり方とは?

=2017/11/19付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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