受験ルポ(6)二人三脚 親子選択の行方

エディナの岩永正浩先生に合格の報告をするアイ(左)と母親=1月29日
エディナの岩永正浩先生に合格の報告をするアイ(左)と母親=1月29日
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成長時期はそれぞれだから

 「首都圏や関西の私立中では英語を入試科目とするところも増えてきている。九州の私立中でも今後、同様の動きが広がっても不思議ではない」

 2020年度から実施される新学習指導要領に伴い、小学5、6年生の英語が正式な教科となる。この動きに、福岡市中央区の学習塾「エディナ」=1月14日掲載=の上田隆史校長(54)はそう話す。

 中学受験ではこれまで、国語、算数、社会、理科の4教科や、国語と算数の2教科での試験が目立ったが、最近では英語も選択できる学校も増え、塾では「小学英語」への対応を迫られているのだ。

 この塾でも既に外国人講師による英語授業を始めており、文部科学省が示した教材などを参考に、新たな授業カリキュラムの検討も進めている。

 現在の大学入試センター試験の英語では、読解(読む)とリスニング(聞く)の試験だけだが、20年度から実施される大学入学共通テストでは「書く」「話す」も加えた「4技能」が評価される。グローバル化時代、将来の就職を考え「英語教育の充実度」を学校選択の基準とする家庭も増えてきており、上田校長は「より早い段階から英語教育、受験対応が必要になる」。20年度からの教育・受験改革をにらみ、学習塾はいち早く走りだしている。

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 塾を取材する中で2組の親子に出会った。

 私立の中高一貫校に合格したノゾミ(11)=仮名=は小学1年から塾に通った。母親(43)も中学受験の勉強をした。4、5年生ぐらいから塾に通うケースが多いが「急にスタートしても、勉強の習慣が付かない」と考えたという。

 「大好きなテレビドラマを見るのを我慢して勉強した」とノゾミ。入試の直前は、ほぼ毎日塾に通い、帰宅は午後10時前。塾と学校の宿題を片付け、ベッドにもぐり込むのは午前1時くらい。夕食も塾でとり、母親手作りの温かいおかずの入った弁当を食べた。

 「これから変わる大学入試を考えれば、中学受験は大変だけれど、こっちの方が有利。高校受験の心配もしなくていいし…」

 親子の二人三脚は、そんな選択だったようだ。

 アイ(12)=同=は3人きょうだいの末っ子。6年上の姉が通っていた市内の私立中に合格した。「大学受験を見据え、先生たちの指導が熱心」と母親(44)。アイも「お姉ちゃんが楽しそうに通っていた。先生も優しそう」とやる気になった。

 きょうだいは皆、中学受験を経験した。母親は「3人目にして中学受験の本質を知った。余裕が生まれたというか、成績のことを気にしすぎなくなりました」と振り返った。

 塾に迎えに行き、自宅まで約10分の帰り道は、学校や塾の様子を話す二人きりの時間だった。

 「上の子とはテストの点数ばかり話していた。でも3人目になって初めて、親子の適度な距離を保て、『自然体』で臨めた」

 何が子どもにとってベストな選択なのかは分からないが、親たちも受験という試練を通じ、何かを学んでいるようだ。

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 受験を終えた6年生たちは今も塾に通っていた。

 エディナ薬院本校(同市中央区)では、私立中の授業内容を先取りする講座が開かれていた。上田校長は「中学1年の2学期末テストがその後を左右する」と言う。大学受験を考えれば、むしろ合格後こそが正念場なのだと。

 というのも、中学受験の失敗をバネに、高校、大学受験で急伸する多くの子どもたちも見てきたからだ。

 「子どもによって成長する時期は違う。最後まであきらめない思いを持ち続けることが大事なんです」

 受験の成功と失敗。それぞれに何か意味があるのかもしれない。

 ◆福岡県内の私立中入試 本年度、県内の私立中学校の受験者は減少傾向で少数激戦。受験時期が早まり、「お試し受験」で複数校を併願する児童が減っていることなども原因という。大学入試センター試験では近年、知識量などを競う問題ではなく、現実のデータなどに基づく、問題解決力や実生活への活用力などを問う問題(PISA型、21世紀型学力)が増えているが、そうした出題傾向も一部で見られるという。エディナは「今後も思考力を重視していく傾向が考えられ、十分な対策が必要だ」と指摘する。

=2018/02/11付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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