受験ルポ(8)自分流 学習の作法とは

生徒の自習内容を確認する原田将孝校長。考え方をきちんと理解しているか、しつこいくらいに質問を重ねていた=14日、福岡市中央区
生徒の自習内容を確認する原田将孝校長。考え方をきちんと理解しているか、しつこいくらいに質問を重ねていた=14日、福岡市中央区
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全ての基本は「国語力」

 「学習の作法」って何? 難関大学を目指す生徒に、全教科をたった1人で指導する「GLS予備校」(福岡市中央区)=1月28日掲載。その指導法についてルポしたら、読者からそんなメールが寄せられた。

 あらためて原田将孝校長(35)に尋ねると-。

 「徹底した反復や解答に至る道筋の説明、可視化がポイント。当たり前のようだが、100パーセント徹底できている人は少ないんじゃないかな」

 数学の問題なら、数値を変えてみたり、違った解き方を試したりして、とにかく手を動かす。英語なら一つの文章を分解し、五文型のどれで、どんな文法が使われ、どんな意味を持つかを考え、読み進める。

 じっと問題を見つめ「感覚で解ける」と、あいまいに流している生徒ほど、成績は頭打ちになるという。

 「凡事徹底ですよ」

   ◇   ◇

 原田さんは東京大在学中、アルバイトで塾講師をしていて、あることに気づいた。

 「学力が伸び悩む生徒の多くは、国語力が足りない」

 英単語で「interfere」の意味を「干渉する」と暗記しても、干渉という言葉の理解が欠けていた。世界史の用語を説明しても、説明する言葉が伝わらない。物理や数学にしても、数式では解けるのに、問題文の意味が理解できない…。

 語彙(ごい)力や言葉の理解度が、国語に限らず、多くの教科の足を引っ張っていたのだ。

 だから塾では、生徒の自習内容について、きちんと考え方を理解しているか、原田さんは一つずつ、言葉を交わし、確認しているのだという。「初歩の初歩」として一例を挙げた。

 原田 「パラドックスとは?」

 生徒A 「逆説です」

 生徒B 「一見事実に反するようだが、真理を突いていること」

 生徒C 「例えば『急がば回れ』かな」

 生徒D 「急ぐのなら近道すべきなのに、目標達成には焦らない方がいいこともあるから、あえて回り道をする。これがパラドックスです」

 辞書の意味を暗記しただけでは、生徒Aの回答で終わる。でも、原田さんは生徒Dの、自分なりに思考し、自分なりの言葉で回答ができるまで、質問を重ねていくという。

 「機械的な暗記ではなく、一つの言葉に理解の段階があることを伝えている」

   ◇   ◇

 昨年5月からこの塾に通う福岡市内の私立高3年のタクヤ(18)=仮名=は、1カ月で受験勉強への「感覚」が変わったという。

 学校の授業は教科書を読むばかりで退屈。丸暗記すればテストで点が取れた。でも応用問題になるとつまずいた。本当に分かっているか、詰められる日々。自問自答を繰り返していると、何が分からないかが浮かび、ある日、今まで解けなかった問題が解けたそうだ。「勉強が本当に楽しい」。タクヤはいま、寸暇を惜しんで机に向かう。

 ダイエット本を読んでも簡単にやせられないよう、受験勉強にも近道はない。基本を忘れず、遠回りかもしれないけれど、自分流の道をどう見つけるか。それが勉強を究めていくポイントのようだった。

 14日公表された高校の学習指導要領改定案(2022年度から)。新たな授業手法「アクティブ・ラーニング」(主体的、対話的で深い学び)が全教科で導入されるが、原田さんの取り組みは、その一つの実践のように思えた。

 きょうから始まった国公立大2次試験。原田さんは生徒に「試験の前日までは誰よりも貪欲に、当日は欲を捨てること。やってきたことに誇りを持って受けなさい」と呼び掛けた。

 大事なのは「自信」ではなく「誇り」だと。ぬくもりと厳しさが入り交じる、励ましだった。

 ◆高校の新学習指導要領 大学受験に向け、教員が教え込み、暗記中心だった受け身の学習方法を改め、全教科に生徒同士の対話を重視したアクティブ・ラーニングが導入される。27科目が新設・改定され、地理歴史・公民分野では、新たな必修科目として、主権者教育に向けた「公共」、日本と世界の近現代史を学ぶ「歴史総合」ができる。

 大学入試センター試験に代わり、2020年度から実施される「大学入学共通テスト」とも連動した改定。人工知能(AI)の時代も見据え、生徒たちが身に付けるべき「学力」の捉え方が大きく変わろうとしている。

=2018/02/25付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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